国連大学キリンフェローシップ卒業生

レイチェルさん(Rachel Elano)フィリピン出身

研究テーマ 新鮮な農作物中の食中毒菌および腐敗菌の検出と制御

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野菜を原因とする食中毒は4%に上ると言われており、実は肉などと変わりません。私は、ほうれん草やレタスなど一般的な野菜を用いて、病原菌を効果的に殺菌する洗浄の方法などを研究しています。日本滞在中に国際学会で発表ができる見込みです。フィリピンでは、食中毒になってもあまり適切な処置がなされないため、深刻な状態に陥ることがあります。日本にいる間、精一杯ノウハウを身につけ、状況の改善に貢献したいです。

プラムアンさん(Pramuan Saithomg)タイ出身

研究テーマ バイオエタノール製造に適する酵母の改良

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タイで豊富に収穫できるサトウキビを原料に、糖蜜からバイオエタノールを製造するために最適な酵母を調査、研究しています。タイのバイオエタノール製造の技術には、まだ改善の余地があり、より効率良く生産できる可能性があります。集中できる環境を与えてもらっているので、日本に来てから、研究は予想以上にはかどっています。どんどん挑戦して成果をあげ、この分野で大きく貢献できるようになりたいです。

ムンクツェツェグさん(Munkhtsetseg Baatar)モンゴル出身

研究テーマ 食品の無機成分の分析に関する研究

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モンゴルでは、6~10歳の児童に対する学校給食が2006年に始まったばかりです。国内で安価に手に入るナッツやハーブなどに含まれる栄養を分析し、いかに効率よく、バランスのとれた給食を子どもたちに提供できるようにするかが、私の研究テーマです。モンゴルは貧しく、子どもたちの空腹を満たすこともままならないのが現状ですが、発育過程にある子どもたちのために何とか役に立ちたいと、研究に励んでいます。

ナズマさん(Nazma Shaheen)バングラデシュ出身

研究テーマ バングラデシュの食品の機能性の探索

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バングラデシュでは、貧しい人が栄養失調である一方で、飽食による栄養過多の人も増えています。これは、「バランスのとれた食事」という概念が浸透していないことに起因する問題です。近い将来、国内で自給できる野菜や果物、スパイスなどに含まれる機能をすべてデータベース化して、一般の人が身近な食べ物によって健康を維持したり、病気を予防する知識をつけられるよう働きかけていきたいと考えています。

ウメーッシュさん(Umesh Hebbar)インド出身

研究テーマ 新規加熱加工技術を活用した高品質食品の開発

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インドには、パーボイルドライスという、古来より親しまれてきた加工米があり、特に南インドでは米に占める割合が6割とも言われています。私はこれを、伝統的な加工方法から進化させ、より美味しく、効率良く生産するための研究をしています。水滴を含んだ特殊なスチームで加熱・殺菌することで、優れた品質を保てることがわかってきました。製造の時間も短縮できるので、環境負荷も減らせそうです。

5人の研究員に、日本での暮らしについて聞いてみました

Q
研究以外で、日本に来てからの思い出を教えてください。
A

お花見に行ったり、夏まつりで浴衣を着て踊ったりしたのは忘れられない思い出になりそうです。それから、私たち5人のうち3人が、日本で初めて自転車に乗れるようになりました!最初は、蛇行したりして、見ているほうがこわい乗り方の人もいましたが(笑)、今では全員が自由に乗りこなしています。

Q
研究員同士の交流はありますか。
A

研究室はばらばらですが、ゲストハウスでは5人全員が同じフロアに住んでいるので、毎日顔を合わせています。自国の料理を持ち寄ってパーティを開いたこともあるんですよ。男性のほうが料理が得意だといううわさも・・・(笑)。

Q
日本に来て不便なことはありますか。
A

初めの1ヵ月くらいは、言葉の不安もあり、異文化に順応するのが大変だと感じることもありました。しかし、周りのあたたかいサポートに恵まれ、今はすっかり慣れることができました。素晴らしい環境で存分に研究に打ち込めることに喜びを感じながら、日本での生活を楽しんでいます。問題と言えば唯一、私たちのほとんどが高温多湿に慣れているのですが、モンゴルのムギー(ムンクツェツェグさんの愛称)さんだけは、日本の蒸し暑さをどうにも楽しむことができないみたいです!

Q
国連大学キリンフェローシップについての感想を聞かせてください。
A

食品総合研究所の研究環境は期待以上でしたし、アドバイザーをはじめ、惜しみない協力をしてくれるスタッフの皆さんのお陰で充実した研究生活を送っています。また、キリンフェローシップのプログラムの素晴らしさは、帰国後も2年間のフォローアップを行ってくれるところにもあります。日本での研究は1年で終了ですが、その後も2年間、必要な機材や、母国では手に入りにくい材料を提供してもらうなど、継続してサポートを受けることができます。トータルで3年間、安心して研究を続けさせてもらえることに、とても感謝しています。

  • フェローシップ研究員には、アドバイザーと呼ばれるそれぞれの分野の専門家(農学博士・工学博士など)が専属でつき、研究のサポートをしています。
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