[ページの先頭です。]

ページ内を移動するためのリンクです。

2007年8月9日

メタボローム解析を活用し、酸化防止効果のあるビール酵母の育種に成功
〜慶應大学と共同研究で、亜硫酸を多く生産し硫化水素を低減させる酵母育種法を発見〜

 キリンホールディングス株式会社(社長 加藤壹康)の基盤技術および次世代技術の開発を担うフロンティア技術研究所(横浜市金沢区、所長 石井康之)は、慶應義塾大学先端生命科学研究所(山形県鶴岡市、所長 冨田勝)と共同でメタボローム解析※1という新しい手法を用いて酵母中の代謝物質(メタボローム)の流れを改変することで、ビールの品質向上に有効なビール酸化防止効果のある酵母の育種に成功しました。
 当社は、この成果を今後のビールづくりに活用するとともに、メタボローム解析を核となる技術として位置づけ、酒類、医薬、アグリバイオ、健康・機能性食品といった様々な分野に応用していきます。

※1 様々な状態の細胞や生体試料に含まれる代謝物質(メタボローム)を網羅的に測定し、細胞の違いやそれらが置かれる環境の違いによって代謝反応がどのように変化するかを統合的に解析すること。

 発酵により酵母が生成するビール中の硫黄系化合物はビールの香味に大きな影響を与えることが知られています。その物質の1つである亜硫酸は高い抗酸化作用をもち、ビールの鮮度の維持に重要な役割を果たす一方、硫化水素はビールの硫黄臭の原因物質の1つと言われていることから、硫化水素を減少させ、亜硫酸を増加させる酵母の育種が求められます。しかし、亜硫酸と硫化水素は通気や温度などを変えて一方を増減させると、他方も連動して増減するという問題が生じます。そこで当社は、慶應義塾大学と共同でCE-MS※2を用いて酵母の代謝物質を網羅的に測定し(メタボローム解析)、酵母細胞内の代謝の流れを調査した結果をもとに、酵母内の代謝物質の流れの改変を行い、亜硫酸の生産量を増加させながら、硫化水素生産量を減少させる酵母の育種を試みました。

※2 慶應義塾大学曽我朋義教授らが開発したキャピラリー電気泳動 - 質量分析計。数千の代謝物質の一斉分析を可能にした分析法。

 具体的な実験として、硫黄系物質の代謝経路について、ビール酵母と、亜硫酸や硫化水素をほとんど生成しないビール酵母の近縁であるパン酵母でマイクロアレイ解析※3により遺伝子量を比較するとともに、メタボローム解析により代謝物質量で比較しました。その結果、ビール酵母はパン酵母に比べてアスパラギン酸から代謝される物質の量が極めて少ないことから、硫化水素からホモシステイン※4への代謝があまり行われず、その結果、亜硫酸と硫化水素がそのまま細胞内に蓄積することが判明しました。
 この分析結果から、硫化水素量を減らすためにはアスパラギン酸から代謝される物質の量を増やせばよいと考え、アスパラギン酸からの代謝される物質量が多く、なおかつ亜硫酸量を増やす株を2種類のアミノ酸類似体※5を用いて選抜しました。その結果、親株に比べて硫化水素生産量を増やさずに亜硫酸生産量が増加した変異株を単離することができ、ビールの酸化防止効果があり、なおかつ硫黄臭の少ないビール酵母の育種に成功しました。

※3 1枚のスライドガラス上に数千から数万の遺伝子を異なるスポットとして固定させ、ゲノムスケールで全ての遺伝子の発現パターンを解析すること。
※4 必須アミノ酸であるメチオニン生合成における中間物質。アスパラギン酸から代謝される物質と亜硫酸・硫化水素から代謝される物質より合成される。
※5 アミノ酸の物性や機能に類似する分子。アミノ酸類似体に対する耐性変異株の中には、アミノ酸の生合成を抑える調節機構を解除するものがある。

 当社は、酒類・飲料および食品分野の未来につながる技術を開発するとともに、お客様に安全な食品をお届けするため、原料や製品の安全性確認、新規開発商品の分析評価など、食品の安心・安全を高度に確保するための取り組みを行っています。キリングループは「おいしさを笑顔に」をグループスローガンに掲げ、いつもお客様の近くで様々な「絆」を育み、「食と健康」のよろこびを提案していきます。

[ここからフッタです。]

© 2007 Kirin Holdings Company, Limited.

先頭へジャンプ