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2007年8月9日

発表概要

1.実験方法と結果

(実験1)ビール酵母とパン酵母のメタボローム解析とマイクロアレイ解析を実施。
ビール酵母は亜硫酸と硫化水素を生成するが、パン酵母はこれらをほとんど生成しないことが知られている。そこで、これらの酵母においてマイクロアレイ解析により遺伝子の発現量を解析すると同時に、メタボローム解析により細胞内の代謝物質量を解析することで両酵母を比較し、原因調査を行った。

図1 ビール酵母とパン酵母のメタボローム解析による代謝物質量比較

(結果1)細胞に必須なアミノ酸であるメチオニンは、硫化水素とO-アセチルホモセリン(OAH)から合成されるホモシステインから生成されるが、ビール酵母はパン酵母に比べて発酵初期段階でアスパラギン酸からホモセリンに変換する酵素の働きが弱いため、細胞内のOAH量が極めて少ないことがわかった(図1)。そのため、硫化水素からホモシステインへの代謝が行われずに、亜硫酸・硫化水素が蓄積することが判明した。

(実験2)亜硫酸高生成ビール酵母の育種
結果(1)をもとに、硫化水素生産量が増えることなく、亜硫酸生産量が増加した酵母株を、2つのアミノ酸類似体であるスレオニン、メチオニンをもちいて段階的に耐性株を取得するという方法により選抜を行った。

(結果2)アスパラギン酸からホモセリンおよび硫酸イオンから亜硫酸までの代謝量が多い酵母を自然変異株から選抜したところ、硫化水素生産量は増えずに亜硫酸生産量が顕著に増加した株を単離することができた。

図2 育種変異株の亜硫酸・硫化水素生成量

2.今後の考察とビールづくりへの活用
メタボローム解析とマイクロアレイ解析とを組み合わせて、細胞内の代謝の全体像を把握することによって、目的の物質の代謝を制御することが可能であることが示された。この手法を酵母の別の代謝系にも活用しながらビール醸造技術につなげていくとともに、酵母に限らず様々な微生物の代謝系の改変による有用物質生産株の育種に応用することができると考える。
また、メタボローム解析は、疾患と関連した代謝分子(バイオマーカー)の迅速な発見、新規の生理活性分子の発見や、創薬ターゲット分子の検出、植物の品種改良にも有用な技術であると考えられる。

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