2008年2月7日

2008年 キリングループ経営方針について
〜アジア・オセアニアをフィールドに「食と健康」領域で価値を提案するリーディングカンパニーへ〜

 キリングループは、キリングループ長期経営構想「キリン・グループ・ビジョン2015」(略称:KV2015)を実現するための第1ステージである中期経営計画「2007-2009年キリングループ中期経営計画」の2年目として、2008年のスタートを切りました。
 2007年はキリンビール株式会社が創立100周年を迎えるとともに、次の100年に向けて純粋持株会社制に移行し、新生キリングループが始動した節目の年となりました。グループの各事業会社が着実な実績をあげたことに加え、協和発酵グループやナショナルフーズ社(オーストラリア)との提携といった積極的な経営判断を行い、攻めの姿勢を打ち出しました。
 2008年は、そうした新たな提携をシナジーの創出に向けて確実なものとするとともに引き続き飛躍的成長への手を緩めず、また各事業会社では着実な成長を実現し、さらにはグループシナジーを最大化することを成長戦略の柱として力強く前進していきます。新たなパートナーも加わったキリングループは、アジア・オセアニアをフィールドに「食と健康」領域で価値を提案するリーディングカンパニーを目指して、アクセルを緩めることなく邁進します。

「2007-2009年キリングループ中期経営計画」と2008年の基本方針

「2007-2009年キリングループ中期経営計画」

【定性目標】

■KIRINブランドがあらゆる企業活動を通じて、「信頼」「躍進」のブランドとして評価を得る。

■各事業の商品・サービスを通じて、「食と健康」の新たなよろこびを提供する。

■安心で快適な社会の維持発展に貢献し、社会との共生を重んじる企業グループとして高い評価を獲得する。

【定量目標】

連結売上高(酒税込み) 2兆1,500億円、連結売上高(酒税抜き) 1兆7,000億円
営業利益 1,500億円、営業利益率(酒税込み) 7%以上、営業利益率(酒税抜き) 9%
ROE 7%以上

【基本方針】

  1. 1.基盤事業強化と飛躍的な成長の実現
    1. (1) 国内酒類事業の再成長
    2. (2) 綜合飲料グループ戦略の推進
    3. (3) 国際化の推進
    4. (4) 健康・機能性食品事業の展開
    5. (5) 医薬事業の成長加速と独自の強みをいかしたアグリバイオ事業の展開
  2. 2.企業価値の最大化に向けた財務戦略
  3. 3.新グループ経営体制による運営
  4. 4.KIRINブランドの価値向上とキリングループCSRの確立と実践

2008年

【定性目標】
上記の中期経営計画目標と同じ
【定量目標】
連結売上高  2兆1,000億円(+16.6%) 営業利益  1,330億円(+10.3%)
経常利益      1,240億円(+0.5%) 当期純利益  570億円(△14.6%)
※ただし、中期経営計画の定量目標については中間決算発表時(8月)に修正数字を発表する予定

【基本方針】

  1. 1.基盤事業として国内酒類・清涼飲料事業が確実な成長を実現するとともに、綜合飲料グループ戦略を推進する。
  2. 2.医薬事業については、協和発酵工業社との提携により成長に向けた体制を構築する。
  3. 3.健康・機能性食品事業の領域を明確化し、グループ総合力による事業戦略を展開する。
  4. 4.アジア・オセアニアで、新たにナショナルフーズ社も加えて「食と健康」領域でのリーディングカンパニーを目指す国際化戦略を展開する。
  5. 5.企業価値の最大化に向けた財務戦略を推進する。
  6. 6.キリングループCSRを明確化し、積極的な取り組みを実践する。

2008年基本方針に基づく取り組み

1.国内酒類・清涼飲料事業の推進

 キリングループの基盤である国内酒類事業を磐石な体制とするため、キリンビール社では「定番商品の強化」「糖質オフ商品の強化」「総需要拡大」の3点に注力し、お客様のニーズと市場環境変化に積極的に応えるための商品ポートフォリオ強化を進めます。併せて、営業活動での味の素社とのコラボレーションやライオンネイサン社(オーストラリア)とのホップの共同調達など、新たなコラボレーションやグループシナジーの創出を図ります。メルシャン社は、ワイン・加工用酒類でのストロングNO.1を目指し価値営業の強化を図るとともに、商品戦略では国産デイリーワイン、同ファインワイン、輸入デイリーワイン、同ファインワインの4つの分野で戦略的な価値提案を強化します。両社の力を合わせて総合酒類事業を推進し、収益基盤の強化により国内酒類事業の磐石化を図ります。
 清涼飲料事業ではキリンビバレッジ社を中心に、国内NO.2のポジションを目指して事業強化を進めます。チルド飲料や高付加価値商品を俯瞰した「ブランドポートフォリオ強化」と、量販市場や自動販売機のコラム増加などの「市場開拓力強化」、グループ連携による「エリアマーケティング強化」の3点に注力して取り組みます。
 またグループシナジーの創出に向け、綜合飲料グループ戦略の推進を強化します。原材料の共同調達や製造拠点の共同活用、キリンマーチャンダイジング社による量販店・飲食店のマーチャンダイジング活動の一元化をはじめ、飲食店開拓や自動販売機設置での連携など、引き続きシナジーの最大化を目指します。

2.医薬事業の基盤強化と推進

 医薬事業は、発酵・バイオ技術をいかして「食と健康」領域で事業展開するキリングループの中で「健康」領域を担う重要事業と位置付け、バイオテクノロジーによる医療価値の提供を目指します。「腎臓」「がん(血液を含む)」「免疫・感染症」を重点領域に、抗体医薬品、細胞医薬品の開発を進めるキリンファーマ社では、持続型赤血球造血刺激因子製剤「ネスプ®」の販売強化と併せて二次性副甲状腺機能亢進症治療剤「レグパラ®錠」の発売により、腎臓・透析領域での事業拡大を図ります。また開発候補品の充実を図り、抗体医薬品や細胞医薬品の開発にも注力するほか、テルモ社との提携では具体的な取り組みに向けた検討を加速し、事業基盤の強化も進めます。
 さらに、10月の協和発酵工業社との統合により、抗体技術を核にした最先端のバイオテクノロジーを駆使して医療価値を提供する日本発のグローバル・スペシャリティファーマを目指します。

3.グループ総合力による健康・機能性食品事業の推進

 健康・機能性食品事業の領域を“お客様が健康を意識して摂取する全ての食品”と明確化し、グループ全体で取り組む事業と位置付けます。「食と健康」領域での「食」とは、発酵・バイオ技術を中心としたグループの技術力・ノウハウをいかして原材料に付加価値を加えた食品を意味し、グループ内の酒類・清涼飲料・食品・調味料などがそれに当たります。キリングループでは、その中でお客様の健康志向というニーズに対する積極的な提案を行う領域を広く健康・機能性食品と考えます。従って、清涼飲料や乳製品、機能性食品のほか調味料などの食品素材事業を中心に、各事業が連携してグループ全体で取り組みます。

 キリンビバレッジグループ(小岩井乳業社ほか)やナガノトマト社、キリン ヤクルト ネクストステージ社、キリンフードテック社などが連携して、健康志向に応える付加価値提案を進め、グループR&Dにおいても重点領域として優先的に資源配分します。提携を進める協和発酵グループとは、医薬以外の同一事業領域において食品関連事業との統合等を検討しており、グループ力の強化を図ります。
 また、2007年末に全株式を取得したナショナルフーズ社はオーストラリアでNO.1の乳製品・果汁飲料会社であり、健康・機能性食品事業を推進する上での重要な事業会社として連携を図ります。

4.国際化戦略の推進

 2015年の海外売上高比率30%に向けて、アジア・オセアニアを中心に「食と健康」領域での事業を拡大します。
 酒類事業ではライオンネイサン社やサンミゲル社(フィリピン)との戦略的提携を強化するほか、中国では上海の麒麟(中国)投資有限公司を要に最大製造能力20万klの新工場を有する麒麟啤酒(珠海)有限公司などを拠点として、重点地域(長江デルタ、珠江デルタ、東北三省)でのより効率的な事業展開を進めます。また麒麟(中国)投資有限公司の役割を、中国における綜合飲料グループ戦略を含む酒類・飲料・食品事業戦略の策定・推進と位置づけ、機能強化を図ります。

 清涼飲料事業では強みの製造技術力をいかし、好調な「午後の紅茶 ミルクティー」を武器に中国を中心に事業拡大を図ります。成長市場として注目が高まるベトナムでは、エースコック社との合弁会社キリン・エースコック(ベトナム)飲料有限責任会社の設立と販売開始のための準備を進めます。
 ナショナルフーズ社はアジア・オセアニアでの事業拡大を目指し、健康・機能性食品事業も含めた「食と健康」領域の基盤強化を進めます。また、ライオンネイサン社とのシナジー創出に向けた検討を進め、綜合飲料グループ戦略の推進を図ります。キリンフードテック社では、核酸系うま味調味料(商品名:リボタイド)を製造するインドネシアの新工場(生産合弁会社キリン・ミオンフーズ社)を今春から稼動する予定で、稼動後はシンガポールを物流拠点としアジア・オセアニアを中心に世界的に展開します。さらに、中国に販売会社(上海麒麟食科商貿有限公司)を設立し7月から営業を開始することで、調味料や食品素材の事業拡大を図ります。
 医薬事業では、タイ、シンガポールに続くASEANでの事業拡大を検討するとともに、米国での開発候補品の充実を図り、アグリバイオ事業では花き種苗事業とバレイショ事業を中心に、世界のグループ会社と連携して事業基盤強化を進めます。

5.企業価値の最大化に向けた財務戦略の推進

 企業価値の最大化に向けて、株主重視の経営および飛躍的な成長を実現するための財務戦略を引き続き推進します。株主還元策は、安定的な配当を基本と位置付けるとともに、2007年より連結配当性向30%以上を新たな指標とし、実質的利益水準の向上に伴う配当の増額を目指しています。 2008年以降は、飛躍的な成長戦略に基づく事業投資によるのれん等の影響を勘案した上で、配当水準の向上に努めます。また、保有資産の見直しを進め、総資産の圧縮を図るとともに、財務体質の健全性を考慮したうえで、自己株式の取得を検討します。
 飛躍的な成長のための事業投資に必要な資金については、有利子負債の活用を主体とし、資本効率の改善に努めます。

6.キリングループCSRの推進

 キリングループでは、CSRを“社会から信頼をいただくための取り組み”と捉えています。
 企業の基盤的な取り組みとしては、コンプライアンスのさらなる徹底と内部統制の基盤としてのリスクマネジメント推進、食の安全・安心の徹底に向けた品質保証体制の強化を進めます。また、酒類を扱う企業グループとして適正飲酒や問題飲酒防止の啓発活動に取り組むほか、キリン・ウィメンズネットワーク活動といった女性を中心とした人材の多様性を尊重したキリン版ポジティブアクションの展開により、一人ひとりが生き生きと働ける場のさらなる実現を目指します。
 環境への取り組み、スポーツ支援、食文化振興については、キリングループの強みをいかして社会的課題の解決に貢献する活動と位置付け、お客様との双方向コミュニケーションを積極的に行います。環境では、CO排出削減への取り組みや森林保全活動「水の恵みを守る活動」を継続するほか、キリングループの強みである発酵・バイオ技術をいかしたエネルギー利用やバイオエタノールの研究も進め、社会的課題である地球温暖化防止への貢献を目指します。スポーツ支援はサッカー日本代表支援を中心に、北京オリンピックに向けてオリンピック日本代表選手団も応援します。食文化振興ではキリン食生活文化研究所を中心に、「食と健康」を事業領域とするキリングループならではの知見と調査・研究から、特に発酵をテーマとして、うるおいのある食生活の実現を目指す情報発信や価値提案を行っていきます。
 さらに、「国連大学キリンフェローシップ」などの社会貢献活動を継続するほか、未来を担う子供たちをはじめとした次世代の育成を目的に、スポーツを通じた心の教育や食の大切さなどを伝えるオリジナルのサッカープログラムのほか、発酵・バイオ技術の素晴らしさを学んでもらえる体験型の企画なども予定しています。

 キリングループは、「おいしさを笑顔に」をグループスローガンに掲げ、いつもお客様の近くで様々な「絆」を育み、「食と健康」のよろこびを提案していきます。