<日本のビアガーデンの歴史>
一般にビアガーデンの起源というと、1953(昭和28)年に大阪第一生命ビルにオープンした屋上ビアガーデン「ニユー・トーキヨー」と言われているが、必ずしも屋上ではなく、“屋外でビールをジョッキで飲む”という概念でとらえれば、「ビアガーデン」の起源は明治時代までさかのぼることになる。
日本のビアガーデンの歴史は国産ビールの歴史と同様、横浜で始まった。1875(明治8)年には横浜山手のスプリングバレー・ブルワリーの敷地内で「スプリングバレー・ビアガーデン」が開かれていた。主な客は居留地の外国人で、ガラス製のジョッキやトタンのような素材でつくった容器でビールを提供していた。
明治から昭和初期にかけて、ビールは少しずつ人々に飲まれるようになり、「ビヤホール」「カフェー」「バー」など様々な名称でビールを提供する飲食店が登場した。当時は、業態の名称にこれといった定義もなかったため、屋外でビールを提供する飲食店を「ビヤホール」と称したものもあったようである。
昭和30年代から40年代にかけて、デパートや駅前ビルなどの、いわゆる「屋上ビアガーデン」が全盛を迎える。夏といえばビアガーデンというイメージが定着したのもこの頃である。また、ビアガーデンの隆盛によって、屋上以外の公園や観光地などでもビアガーデンの通称でビールを提供する場所が増えた。
1980年代になると、それまでとは異なる個性的なビアガーデンが増えた。特大テレビでスポーツ中継を放映するビアガーデンや、森や公園の中につくられたビアガーデン、外国の料理や色とりどりのビアカクテルなど個性的なメニューを提供するビアガーデンも現れた。
現在では、趣味や嗜好、生活価値が多様化し、ビアガーデンの楽しみ方も一層多様化していると思われる。女性客が大幅に増え、仕事関係だけでなくプライベートでも楽しみ、ビールと一緒に楽しむ料理の種類も広がっている。今年の夏も、ビアガーデンは大人の夏の定番として、人と人とのコミュニケーションの場を提供し、日常や仕事から解放される癒しの場となるに違いない。
参考文献: 『小学館日本大百科全書』小学館