2008年9月19日

DNA分析によるキクの品種識別技術の開発
〜植物品種の育成者権の保護により、市場での正常取引に貢献〜

 キリンホールディングス株式会社(社長 加藤壹康)のフロンティア技術研究所(栃木県さくら市、所長 水谷悟)は、適正なキク苗・キク切り花の流通に向けて、社団法人 農林水産先端技術産業振興センター(STAFF)および有限会社精興園と共同で、DNA分析によりキク品種を識別する技術を開発しました。迅速かつ汎用性の高い品種識別技術を開発したことで、今後品種育成者の権利が保護され、国内はもとより国際市場でのキクの適正な取り引きに貢献することが期待されます。
 この開発技術については10月11日から13日の日本育種学会第114回講演会で発表します。なお、この技術開発は農林水産省の「平成18年度農林水産物輸出倍増推進事業のうち品種保護に向けた環境整備事業」、「平成19年度農林水産物等輸出促進支援事業のうち品種保護に向けた環境整備事業」の一部として実施されたものです。

 キクは日本のみならず世界的にも三大花卉(キク、バラ、カーネーション)に数えられる花ですが、従来は外観に基づく品種識別を行っており、より正確なDNA分析では汎用的な識別技術が十分に検討されてきませんでした。今回、キクのDNAのうち塩基配列が繰り返されている部分に着目し、品種によって繰り返し数に相違が生じやすいことを利用して、これをPCR法※1により増幅させることで複数の繰り返し配列の長短のパターンを比較して品種を識別する方法を開発しました。この方法を用いて市販品種の多くを含む226品種のキクについて識別できることを確認しました。今後識別マーカー※2を増やすことにより、判別可能なキク品種の拡大が可能であることから、適正な育成者権の保護につながることが期待されます。

  • ※1 ポリメラーゼ連鎖反応。複雑で微量なDNAの溶液の中から、自分の望んだ特定のDNA断片だけを選択的に増幅させる操作方法。
  • ※2 特定の品種に特異的に見出される塩基配列を有するDNAのこと。

 知的財産権の保護への関心が高まる中、農業の分野では植物品種の育成者権※3が重要な知的財産権となりますが、近年、日本で開発・登録された品種が無断で外国に持ち出され、増殖、栽培、販売されたり、日本に輸入されたりするなど、権利が侵害される事例がしばしば問題となっています。
 こうした背景の中、農林水産省生産局では2006年度より、我が国の農林水産物などの輸出拡大を加速するため、日本ブランドの輸出を支える我が国のオリジナル品種を保護する観点から、DNA分析による識別技術の開発を重点的に支援する目的で「平成18年度農林水産物輸出倍増推進事業のうち品種保護に向けた環境整備事業」、「平成19年度農林水産物等輸出促進支援事業のうち品種保護に向けた環境整備事業」が実施されました。特にキクについては、海外における権利侵害が問題となっていることから、この農林水産省の事業の一部として、当社、STAFF、精興園で、より正確な品種識別を可能にするDNA分析に取り組んだ結果、迅速かつ汎用性の高いDNA分析によるキクの品種識別技術を実現しました。

  • ※3 多様な植物新品種の育成を活発にするために品種育成者の権利を保護する制度

 キリングループでは、研究開発活動および知的財産活動の強化に取り組み、経営に資する知的財産の活用を推進しています。アグリバイオ事業においては、育成者権をベースとして開発品種の保護に取り組んでおり、キク、カーネーション、バレイショ品種などの育成者権を取得、または実施許諾を受けて事業競争力の強化を図っています。

 キリングループは「おいしさを笑顔に」をグループスローガンに掲げ、いつもお客様の近くで様々な「絆」を育み、「食と健康」のよろこびを提案していきます。