2011年4月28日

<参考資料>
大麦搗精粕抽出物の免疫活性を確認
〜リグニン配糖体の生理活性の研究成果を日本農芸化学会で発表〜

 キリンホールディングス株式会社(社長 三宅占二)のフロンティア技術研究所(横浜市金沢区、所長 水谷悟)は、大麦搗精粕から抽出したリグニン配糖体が動物で免疫賦活効果を示すことを見いだし、この研究成果を日本農芸化学会2011年次大会にて発表しました。なお、この研究は同大会にてトピックス賞を受賞しました。

 大麦搗精粕は、主に発泡酒製造時に生じる副産物として飼料などに利用されており、セルロース、リグニンなどから構成されています。リグニンは地球上でセルロースに次いで多いバイオマスですが、現在産業利用は限定的であり、今回、リグニンの免疫力向上の効果に着目して作用の科学的な解明に取り組み、マウスの細胞実験および個体実験で免疫活性について検討したところ、その増強機能が確認されました。

 大麦搗精粕から4種の画分でリグニンを抽出し、マウスより採取した樹状細胞※1に作用させ、活性を確認したところ、微粉砕後に酵素処理した不溶性画分(リグニン配糖体画分)にのみ、極めて強い免疫活性化作用が認められました。また、大麦以外の様々な高等植物から抽出したリグニン配糖体についても同様の活性が示されましたが、大麦とイネ由来の画分が極めて高い活性を持つことが確認されました。

  • ※1抗原提示細胞として機能する免疫細胞の一種であり、自らが取り込んだ抗原を、他の免疫系の細胞に伝える役割を持つ。

 さらに、免疫活性作用のメカニズムについて作用標的分子※2の解析を行ったところ、リグニン配糖体の標的はTLR4※3であることが判明しました。また、リグニン配糖体をマウスに腹腔内投与したところNK細胞(ナチュラルキラー細胞)※4や樹状細胞の活性化が示され、経口投与したところ、消化管中の樹状細胞が活性化することが明らかになりました。

  • ※2 免疫細胞の表面にある生理活性作用を引き起こす分子
  • ※3 Tool-like receptor4の略称。大腸菌など細菌に広く存在するリポ多糖を認識する受容体。樹状細胞などの抗原提示細胞に発現し、感染防御や抗アレルギー作用、抗原に対する抗体価を高める作用に関係する受容体。
  • ※4 生体内に自然に存在する、殺傷能力の非常に高い細胞。腫瘍細胞やウイルス感染細胞の破壊に強い能力をもつ。

 これらのことから、身近な食用植物に普遍的に含まれるリグニン配糖体が、TLR4を作用点として多様な免疫活性を賦活する物質であることが明らかになりました。今後、これまで産業利用が限定的だったリグニン関連物質の利用範囲が拡大するとともに、大麦副産物のさらなる有効活用を促進し、環境負荷低減に繋がることが期待されます。

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