2012年9月19日

<参考資料>
「大麦搗精粕」配合飼料による泌乳牛の乳汁体細胞低減効果を確認

 キリンホールディングス株式会社(社長 三宅占二)のフロンティア技術研究所(横浜市金沢区、所長 水谷悟)は、東京大学農学生命科学研究科付属牧場との共同研究で、大麦搗精粕(おおむぎとうせいかす)配合飼料の泌乳牛への経口投与により、乳汁体細胞の低減効果が得られ、乳質の改善につながることを見いだし、第154回日本獣医学会学術集会にて9月15日に発表しました。

 畜産業界では、乳質に影響する乳房炎※1をはじめとする細菌感染症の治療や予防のために抗生物質投与が行われていますが、薬剤耐性菌※2の出現など環境汚染に対する懸念や、家畜の健全な飼育の観点から、抗生物質に替わる感染予防素材の必要性が高まっています。一方、当社では、主に発泡酒製造時に生じる副産物である大麦搗精粕の有効利用に取り組んでいます。

  • ※1 乳牛の乳房に細菌が感染しておこる病気。
  • ※2 薬剤、特に抗生物質などに対する抵抗性を獲得した細菌。

 当社では、これまでに、大麦搗精粕をセルラーゼ処理し抽出したリグニン配糖体が、マウスやウシで強い免疫賦活効果があることを確認しています※3。今回の試験では、セルラーゼ処理をしていない大麦搗精粕を配合した飼料を、泌乳中のホルスタイン牛に28日間反復経口投与し、その後28日間を非投与期間として効果を測定しました。その結果、投与中は唾液中のIgA※4濃度の増加傾向や、免疫細胞からのサイトカイン※5産生量の増加傾向が認められました。また、乳汁の成分分析では、細菌感染の指標となる体細胞数は、試験期間中は経時的に減少しました(図参照)。その一方で、その他の乳成分への影響は認められませんでした。

 これらのことから、ウシが大麦搗精粕を経口摂取することで、セルラーゼ処理がされていない大麦搗精粕でもウシの胃に内在するセルラーゼの働きでリグニン配糖体が溶出し、免疫賦活が起こり、乳房炎に起因する乳汁体細胞が低減したと推定されます。大麦搗精粕を配合した飼料を用いて効果が示されたことで、畜産業界における抗生物質に替わる感染予防素材として、今後実用化に向けた商品の開発が期待されます。

 キリングループは「おいしさを笑顔に」をグループスローガンに掲げ、いつもお客様の近くで様々な「絆」を育み、「食と健康」のよろこびを提案していきます。

■図 乳汁体細胞の変化


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