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キシロースからのバイオマス由来プラスチック素材の生産が可能に!

バイオマス由来プラスチックの原料となるL-乳酸をキシロースから高生産する酵母の分子育種に成功しました

キリングループには、酵母を使ってビールや調味料原料(アミノ酸)などを生産する、技術的な強みがあります。この技術を生かし、酵母を使って植物由来の資源から有用物質を生産するための研究開発に取り組んでいます。
キリンホールディングスのフロンティア技術研究所は、従来は発酵による物質生産が困難だったキシロース(糖の一種)から、バイオマス由来プラスチックの原料となるL-乳酸を高生産する酵母を、キャンディダ・ユティリス酵母(Candida utilis)から分子育種することに成功しました。

バイオマス由来プラスチックとは

バイオマス由来プラスチックとは、短期間で再生可能な生物由来の有機性資源(バイオマス)を原料とした、環境配慮型のプラスチックのことです。糖類を乳酸菌で発酵させて得られる乳酸を重合させた、「ポリ乳酸」の実用化が最も進んでいます。ポリ乳酸は、植物由来原料から生産され、微生物分解することができるため、ごみとして残りにくい素材としても注目を集めています。
ここで使われる乳酸には、L-乳酸と、D-乳酸という2種類があり、一方の比率が高いほど光学純度が高くなります。光学純度の高いL-乳酸を重合させたポリ乳酸を、光学純度の高いD-乳酸を重合させたポリ乳酸と混合することで耐久性に優れたプラスチックができます。

キリングループのこれまでの研究成果

「低炭素企業グループの実現」を目指すキリングループは、これまでに、物質生産に適したキャンディダ・ユティリス酵母を使って、副産物であるエタノールを生産することなく、グルコース(ブドウ糖)から高効率でL-乳酸を産生する酵母の分子育種に成功しています。しかし、キャンディダ・ユティリス酵母は、藁(わら)や竹、木材など、食用ではない有機性資源(非可食系バイオマス)の木質系素材に多く含まれるキシロース(糖の一種)を発酵させて有用物質を生産することはできませんでした。継続可能な社会を実現するには、食料と競合するグルコースからのバイオ生産ではなく、食用にならない木質系素材から有用物質を生産することが望ましいのです。グルコースだけでなく、キシロースなどの多様な糖を利用することができないか。そのための酵母開発が、今回の研究テーマでした。

キシロースからの物質生産は、なぜ難しいのか

キシロースは、植物バイオマスの非可食部分を糖化した際に、10〜25%を占める成分ですが、これを利用(発酵)できる酵母は限られていました。そのため、利用効率も低かったのです。例えば、ビール製造時に生じるビール仕込み粕の糖化液では、1リットルあたり20グラムのキシロースが含まれています。このキシロースを効率よく発酵させる酵母を開発できれば、非可食原料からの物質生産の可能性が大きく広がることになります。

ビール仕込み粕 糖化液の糖組成

キャンディダ・ユティリス酵母の代謝経路に手を加え、キシロースからの物質生産に成功

研究では、キャンディダ・ユティリス酵母が乳酸を生産するときの代謝経路に着目し、一つの仮説を立てました。下の図のように、この酵母には、キシロースをキシリトールに変換する代謝の最初の段階で作用するXR(キシロース還元酵素)という代謝酵素と、XRの次に作用し、キシリトールをキシルロースに変換するXDH(キシリトール脱水素酵素)という代謝酵素があります。このXRとXDHが働くために必要な補酵素の不均衡が、キシロースを発酵できない原因ではないかと考えたのです。そこで、必要とされる補酵素を変換したキシロース代謝酵素の遺伝子群を、乳酸生産能を付与した酵母株に導入しました。

キャンディダ・ユティリス酵母の代謝経路

この結果、約100g/Lのキシロースを含む栄養培地で、43時間後に変換効率91%で光学純度99.9%を超えるL-乳酸を生産しました。これは、酵母では抜きん出て高い効率です。また、ビール仕込み粕糖化液からも、78%の収率でL-乳酸を生産することができました。

キシロースからのL-乳酸の生産能評価

変異型酵素を導入したトルラ酵母はキシロースからも効率的に乳酸を生産した(収率91%)。

ビール仕込み粕糖化液からの乳酸生産

ビール仕込み粕糖化液からも78%の収率で乳酸が生産できた。
今回構築した組み換え株は副産物として排出される木質系バイオマスからでも効率的に乳酸を生産できるポテンシャルを有している。

化石燃料に依存しない、植物由来資源の有効利用に光

この結果は、工業的に利用しやすいキャンディダ・ユティリス酵母から分子育種された株が、キシロース単体および複数の糖が混在するバイオマス由来原料からL-乳酸を効率的に生産できることを示しています。開発した酵母は、キシロースを効率よく発酵させることができるため、今後のバイオマス利用の拡大につながることが期待されます。キリングループは、今後も、副産物の有効利用をさらに推進し、地球環境保全に貢献する研究および事業展開に取り組んでいきます。

学会発表

「キシロース発酵性を増強したPichia stipitisの分子育種」2009年度日本農芸化学会年次大会 2009/3/27〜29

「Xylose fermentation by recombinant Candida utilis expressing cofactor specificities converted xylose reductase and xylitol dehydrogenase from Candida shehatae.」2010 Yeast Genetics and Molecular Biology Meeting 2010/7/27〜8/1

「トルラ酵母Candida utilisを用いたキシロースからのL-乳酸の高生産」第63回日本生物工学会大会 2011/9/26〜28

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