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シナリオ分析(TCFD)

キリングループでは、金融安定理事会(FSB)の気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が2017年に公表した提言を踏まえ、気候関連のリスクと機会がキリンの事業におよぼす影響可能性や、「キリングループ長期環境ビジョン」および「CSVコミットメント」に定めた環境戦略のレジリエンスを評価しています。
2018年には、IPCCの代表的濃度経路(Representative Concentration Pathways: RCP)をメインに、共通社会経済経路(Shared Socioeconomic Pathways: SSP)を補助的に利用して3つのグループシナリオを設定し、事業にとって重要な原料である農産物への気候変動の影響について分析しました。その結果、気候変動が農産物に大きな影響を与える可能性が改めて把握できました。
2019年は、気候変動が将来的に農産物の収量におよぼす影響、および原料農産物生産地や国内製造拠点・物流経路における洪水や水ストレスなどの水リスク、さらにはカーボンプライシングがキリングループの炭素排出コストへ与える影響を評価しました。
農産物の収量については、大麦、ホップ、ワイン用ブドウ、紅茶葉を対象として、25を超える文献を調査しました。2018年に設定したグループシナリオ1(2℃シナリオ、SSP1、持続可能な発展)とグループシナリオ3(4℃シナリオ、SSP3、望ましくない世界)を用いて、主な調達先国別に2050年と2100年時点の気候変動の影響を分析しています。
農産物生産地での水リスクについては、大麦、ホップ、紅茶葉、ワイン用ブドウ、コーヒー豆、トウモロコシなどを対象として、主な調達先地域における洪水リスクや水ストレスを地図上に可視化して調査しました。
国内の製造拠点・物流経路における水リスクについては、主要な4つの製品について製造委託先を含む飲料製造拠点とその物流経路における洪水リスクを評価しました。
キリングループの炭素排出コストへのカーボンプライシングの影響については、グループシナリオ1、グループシナリオ3のそれぞれで、GHG排出量削減目標を達成する場合と取り組まない場合に分けて評価しました。

主要農産物の収量/栽培適地に対する気候変動インパクト

凡例:負/正のインパクト

10%未満 ▲/+
10%以上50%未満 ▲▲/++
50%以上 ▲▲▲/+++

農産物 キリングループシナリオ3:4℃・望ましくない世界 2050年
アメリカ アジア 欧州 アフリカ オセアニア
大麦
西アジア
収量▲/+
韓国
収量+
フィンランド
春小麦で収量▲
地中海沿岸
(西部)収量▲、
(東部)収量+
フランス
冬大麦・春大麦とも
収量▲
西オーストラリア
収量▲▲
ホップ
チェコ
収量▲
紅茶葉
スリランカ
低地で収量減
高地では気温上昇の
影響は少ない
インド
(アッサム地方)
平均気温28℃を超えると
1℃ごとに収量▲3.8%
インド
(ダージリン地方)
収量▲▲~▲▲▲
(学術論文ではない
茶産業界による資料)
ケニア
栽培適地の標高上昇
Nandhi地域および
ケニア西部で
大幅な適地縮小
ケニア山地域は
適地であり続ける
マラウイ
Chitipa地区
適地▲▲▲
Nkhata Bay地区
適地▲▲▲
Mulanje地区
適地+++
Thyolo地区
適地++
ワイン用
ブドウ
米国
(カリフォルニア州)
適地 ▲▲▲
米国北西部
適地 +++
チリ
適地 ▲▲
日本(北海道)
適地拡大
ピノ・ノワール
栽培可能に
日本(中央日本)
適地拡大の一方高温
障害も発生
北欧
適地+++
地中海沿岸
適地▲▲▲
スペイン
生産量▲~▲▲
南アフリカ 西ケープ州
適地▲▲▲
ニュージーランド
適地+++
オーストラリア
南部沿岸部
適地▲▲▲
オーストラリア
南部沿岸部以外
適地▲▲
コーヒー豆
ブラジル
アラビカ種の適地▲▲▲
ロブスタ種の適地▲▲▲
東南アジア
アラビカ種の適地▲▲▲
ロブスタ種の適地▲▲▲
東アフリカ
アラビカ種の
適地▲▲
ロブスタ種の
適地▲▲
トウモロコシ
米国南西部
収量 ▲▲
米国
(中西部アイオワ州)
収量 ▲~▲▲

農産物の収量・水ストレス

グループシナリオ1、グループシナリオ3のいずれにおいても、大麦やホップの大幅な収量減が予想されました。また、農産物生産地の水リスクもかなり高くなるという評価になりました。一方、現時点では農産物の価格変動の影響を試算する共通モデルが存在しないために財務的リスクを評価することは容易ではありません。
大麦やホップの将来的な収量減は大きなリスクになり得ますが、自社の知見や技術により影響を低減することが可能です。キリングループでは、発泡酒や新ジャンルなど大麦に依存しない高い醸造技術を開発しており、代替の糖類を使用することができるため、収量減への適応力は高いといえます。この技術は他の国や地域でも活用が可能であり、これらの地域で優位性を持てる可能性があります。また、温暖化に対応できる農産物が開発された場合、キリングループが持つ独自の植物増殖技術によって、迅速な作付面積の拡大に寄与できる可能性があります。スリランカで実施している持続可能な農園認証制度の取得支援や紅茶農園内での水源地保全活動などから得られた知見についても、他の農産物で同様の対応が必要な場合に活かしていくことが可能です。
なお、大麦については、南欧や豪州で大幅な収量減が予想されるものの、北欧や西アジアなどでは収量増が予測され、また、日本においては大きな影響がないと見込まれます。紅茶葉は、スリランカの低地やマラウイの一部で収量減が予想されますが、スリランカ高地やその他の生産国・地域では顕著な影響は認められませんでした。このように、気候変動の農産物への影響は国や地域で影響の度合いが大きく異なります。干ばつや市況による影響の低減などのために複数の産地から調達することでリスクを分散している現在の取り組みと知見は、中長期的な気候変動への対応においても活かすことが可能であると考えています。

主要農産物産地における水ストレス(2040年、キリングループシナリオ3に相当)

製造拠点・物流経路での水リスク

調査対象飲料製品の生産拠点の中に洪水リスクの高い場所が存在することが把握できました。キリンビバレッジでは2018年の西日本豪雨による鉄道等の物流の寸断を経験しましたが、影響を最小限に留める対応を行うとともに、同様の災害が発生した場合のマニュアルを整備しました。短期間に災害に対応し、今後起こり得る災害に備える体制を再整備した経験は、同様の事象が発生した場合に効果を発揮すると考えています。

カーボンプライシング

グループシナリオ1(2℃シナリオ、SSP1、持続可能な発展)において、2030年のGHG削減目標を達成する場合の方が取り組まない場合よりも年間約47億円の炭素排出コストを削減できるという結果になりました。これは、Science Based Targets(SBT)イニシアチブより、産業革命前からの気温上昇を2℃未満に抑えるための科学的根拠に基づいた削減目標として、日本の食品・飲料業界として初めて承認されたキリングループの高いGHG削減目標の効果によるものです。ただし、カーボンプライシングは、各国の政策に左右されるために正確に予想することが困難であることを考慮する必要があります。

カーボンプライシングの影響評価

2030年に30%削減するGHG中期削減目標に取り組まない場合

キリングループシナリオ1:2℃・持続可能な発展
キリングループシナリオ3:4℃・望ましくない世界

キリングループシナリオ3 キリングループシナリオ1
2025年 2040年 2025年 2040年
影響試算額(単位:千USD) 10,944 14,448 51,268 80,374
影響試算額(単位:百万円) 1,215 1,604 5,691 8,921

2030年に30%削減するGHG中期削減目標を達成した場合

キリングループシナリオ3 キリングループシナリオ1
2025年 2040年 2025年 2040年
影響試算額(単位:千USD) 8,956 6,905 41,958 38,411
影響試算額(単位:百万円) 994 766 4,657 4,264

※2025/2040年の想定のCO2排出量に炭素価格予測を乗じて試算

今後の進め方

今回の分析結果から、「キリングループ長期環境ビジョン」および「CSVコミットメント」が目指す姿や、目標・取り組みの方向性は間違っていないことが再確認できました。また、キリングループの環境戦略に現時点で一定のレジリエンスが確認できました。
しかし、評価のベースとなる気候変動の農産物への影響については文献によって結論に大きな幅があり、水リスク評価についてもまだ精度が高いとは言えない状況です。モーダルシフトの代表格である鉄道輸送の寸断といった物理的なクライシスが現実となるなかで、自然環境に対する社会からの懸念や企業に対する期待がさらに高まっていくことも予想されます。
これらに対応するためには、バリューチェーン全体を見直して戦略のレジリエンスを高めていくことが必要です。そこで、今回の分析で得られた知見も活かしながら、本年度中に「キリングループ長期環境ビジョン」を改定する予定にしています。すでに開始している取り組みを加速するだけではなく、より高い目標の設定とその実現に向けた中長期的な課題設定、ロードマップの策定を推進していきます。
起こる可能性は分からないものの、起きた場合に事業に極めて大きな影響を与えるリスクについて、シナリオを設定して評価する新しいリスクマネジメントシステムの定着も課題です。グループCSV委員会などにおいて経営層によるシナリオに基づく環境リスクの評価や適応戦略の議論を深め、経営戦略の中に着実に組み込んでいく計画にしています。

今後検討が必要と思われる気候関連リスクの例

抽出された中長期リスクに対する適応戦略の例

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© 2007 Kirin Holdings Company, Limited.

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