多様な人財と挑戦する風土
2023年6月5日
高い専門性と多様性をドライバーとしたイノベーションの創発によって、
グループの持続的成長・価値向上を実現していく
人財戦略を取り巻く環境は社内外で大きく変化しており、キリングループの人財戦略も大きな転換期を迎えています。生活環境の変化や個人の価値観の多様化も相まって、働き方をはじめ労働市場環境は劇的に変化し、また、当社グループにおいては事業ポートフォリオの転換によって、経営戦略実行に求められる人財も変化しています。強化領域であるヘルスサイエンス事業はもちろん、食領域、医薬領域の既存事業においても、ビジネスの転換や新領域へのチャレンジが必須であり、グループ従業員の全員が両利きの経営に向けた変革当事者となる必要があります。当社グループでは、「人財」を価値創造・競争優位の源泉と改めて位置付け、その価値を最大限引き出すことで、事業を強くし、長期経営構想キリングループ・ビジョン2027(KV2027)の実現と、当社グループの持続的成長・価値向上を実現していきます。
キリングループの人事の基本理念
人財戦略の基盤となるのが「人事の基本理念」です。人財戦略は大きな転換期を迎えていますが、グループ人事の基本理念である「人間性の尊重」は変わりません。人間のもつ無限の可能性を大事にするという考え方は、キリンビールの醸造フィロソフィーである「生への畏敬」にも通じます。無限の可能性をもって、従業員一人一人が新たな価値創造に向かって挑戦し、生き生きと働くことで、仕事を通じて成長し、発展し続ける環境を提供していきます。
キリングループらしい人財戦略で目指す「人財が育ち、人財で勝つ会社」
キリングループでは、「人財」を価値創造、競争優位の源泉と位置付け、人財に投資していくことで、「人財が育ち、人財で勝つ会社」を目指します。
キリングループでは、経営戦略が人財戦略の方向性を規定すると同時に、人財のケイパビリティが経営戦略を策定する上での重要な要素となり、経営戦略の可能性を広げると考えています。競争力の源泉である人財に対し、マーケティング、R&D、ICTといった専門性を高め、食領域からヘルスサイエンス領域・医領域にわたるユニークな事業ポートフォリオを通じて多様な事業経験を積むことで、専門性と多様性を備えた人財を育成していきます。
また、外部人財や障害者の採用、女性の活躍推進など、多様性を受容する組織風土の醸成と成長意欲のある人財の成長を支援する環境を整備することで、一人一人のチャレンジする意欲を高めイノベーションにつながる機会を増やしていきます。
このような、多様な人財の掛け合わせによるイノベーションの創発や、ユニークな事業ポートフォリオにおける人財の育成が、「キリングループらしい」人財戦略です。「人財」の価値を高めることで、組織能力を向上させ、事業を強くし、事業戦略およびグループの持続的成長・価値向上を実現していきます。
グループ経営課題から見る人財戦略の課題認識
人財戦略では、短期的には、事業ポートフォリオ転換に伴う組織能力の強化および戦略の実行度を高めることを、中長期的には、専門性・多様性を兼ね備えた人財輩出によって、将来にわたる企業価値を高めていきます。そのために、現時点で5つの課題を認識しています。
- 事業ポートフォリオ転換に伴う、組織能力の強化(ヘルスサイエンス・新規事業など)
- 将来を見据え、先が見えない時代にこそ求められる、専門性・多様性の人財マネジメント
- 挑戦する人財とそれを支える風土づくり = 高度な戦略を実現する、戦略実行力
- 労働市場や個人の価値観の変化に対応した、働きがいの創出
- 人的資本への注目を契機とした、ステークホルダーとの対話による戦略進化
持続的成長・価値向上に向けて「専門性」と「多様性」をキーに、
人財と組織の両面から取り組みを加速させる
人財戦略実行のキーとなるのは、「専門性」と「多様性」です。VUCA時代において、イノベーションを創発し続けるには、人財と組織の両面の「専門性」と「多様性」を高めていく必要があり、そこでは、個人の「成長意欲」と、多様な人財によるコラボレーション・「共創」の視点が重要です。
人財においては、キリングループが大切にしている「グループ理念・パーパス」への共感を通じ、グループへの貢献と自らの成長につながるWillを基にした自律的なキャリア形成を促進することで、主体的な学び・挑戦といった「成長意欲」を喚起し、専門性を高めることにつなげていきます。そして、専門性を軸とした事業を超えた出向や、高度で広範囲な課題に挑戦する機会などを通じて、多様な視点・価値観に磨きをかけ、人財力の強化を組織としての能力向上につなげていきます。
さらに、組織においては食領域からヘルスサイエンス領域・医領域まで幅広くグローバル展開しているユニークな事業ポートフォリオを生かして、事業を超えた専門性と多様性のある人財の流動性を高め、多様な人財によるコラボレーション・「共創」機会を増やすことで、個人・チームを超えた組織としての専門性と多様性を高め、イノベーションが創発し続ける組織能力の獲得と組織風土の醸成を目指します。
このように、専門性と多様性をキーとし、自律的に学び・挑戦を続ける個人の「成長意欲」と、多様な人財によるコラボレーション・「共創」を高めることでイノベーションの創発へつなげていくストーリーを、今後「キリングループらしいチャレンジ創出」に向けた取り組みに反映していきます。
取り組み事例
成長意欲を喚起し、多様な人財の共創機会を提供
「人財が育ち、人財で勝つ会社」を目指すべく、個人の成長意欲を喚起するために、従業員と経営トップの対話の機会を設けています。また、キリングループの多様な人財が共創できる機会の提供にも取り組んでいます。
グループ理念浸透に向けた対話
キリングループが目指す姿に向けてグループ従業員と経営トップが一丸となって進んでいくために、役員メッセージの発信や対話集会など、従業員と役員のコミュニケーションを推進しています。
その一環として、キリンホールディングスの役員が語り合う、「キリングループ トップリーダーズ トーク」をオンライン・ライブ形式で開催し、「グループの価値観」「事業の多様性の意味」「CSV経営」などを語り合う場を設け、さまざまなポートフォリオの事業会社、および同時通訳を通じた海外配信によって多くの従業員が参加しています。
当日は、事前集約した質問の対話に加え、Zoomに直接投稿いただいた質問やコメントにもその場で回答をしたことによって、参加者との距離感を縮めることにつながり、「経営層を身近に感じられた」「とても胸が熱くなり、元気をもらった」という声も寄せられました。これからも、キリングループが大切にしている考え方や目指す姿についての対話を重ねていきます。
- 2022年度は3回開催。イベント1回当たりの従業員参加数の上限1,000名とし、事前エントリー制としている
越境学習を通じた個と組織の多様性
越境学習では、『個の自律的なキャリア形成』に加え、『個と組織の多様性』を狙いとしています。自社内の経験や価値観にとどまらず、社外・人とのつながりを通じて新たな視点や価値観が得られ、また、さまざまな価値観をもつ人財を受け入れることで、組織の多様性受容にもつなげています。
具体的には、2019年に「留職プログラム制度」をスタート、2020年には「副業」を解禁し、同時に外部からの副業受け入れも開始しました(グループ内副業件数:105件※)。
2022年、2023年には企業間で相互に副業に取り組む「キャリアオーナーシップとはたらく未来コンソーシアム」に参画。また、2022年8月に設立された「人的資本経営コンソーシアム」にも参画し、経済産業省・金融庁の支援の下、日本企業の持続的価値向上に向けて「人的資本経営」の推進に取り組んでいきます。
- 2020年7月〜2022年12月 許可数(キリンホールディングス、キリンビール、キリンビバレッジ、メルシャンの4社勤務者)
グループ従業員との対話を目的とした
「キリングループ トップリーダーズ トーク」
キリンホールディングスの役員が、当社グループが目指す姿について、オンライン・ライブ形式で語り合う場を設けている
越境学習の一環としての
「留職プログラム制度」
自ら手を挙げた若手の従業員を民間非営利団体(NPO)などに派遣し、現地で社会課題に取り組む体験を通じて、CSV経営を支える人財の早期育成を行っている
人的資本開示指標
指標項目 | 補足 | |
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独自性 |
専門性と多様性の人財育成
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経営人財パイプライン強化 | 将来の経営を担う人財をデータベース上で管理(タレントプール)し、人財充足率を把握 | |
キリングループらしいチャレンジ創出 ※これから設定 | キリングループの理念・パーパスへの共感と愛着をもち、従業員一人一人が自律的に学び・挑戦を続けている状態を表す指標を設定 | |
越境学習者数 | 個・組織の専門性・多様性向上に向けた、副業・兼業者数・受け入れ人数、異業種研修参加者を設定 | |
理念・パーパスの体現指数 | キリングループの目指す姿を具現化した取り組み数として「KIRIN Group Award 応募者数」を設定 |
指標項目 | 2022年実績 | 対象範囲・補足 | |
比較可能性 | 従業員エンゲージメント(%) | 70% | キリングループ |
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女性経営職率(%) | 10.6% | キリンホールディングス原籍者 | |
キャリア採用比率(%) | 27.3% | キリンホールディングス原籍者 | |
男女間賃金格差(%) |
|
キリンホールディングス原籍者 | |
男性育休取得率(%) | 73% | キリンホールディングス原籍者 | |
出産・育児休暇後の復職率(%) | 93.3% | キリングループ | |
平均勤続年数(年/人) | 16.2 | 国内キリングループ | |
離職率(%) | 10.6% | 国内キリングループ | |
休業災度数率(件/百万時間) | 1.00 | キリングループ | |
従業員一人当たりの年間総実労働時間(時間/人) | 確認中 | キリングループ | |
労働災害による死亡者数(人) | 0 | キリングループ | |
労働慣行人権苦情対応件数※1(件) | 98 | キリングループ | |
人権研修受講率(%) | 89.5% | キリングループ | |
団体交渉権をもつ従業員割合(%) | 53.1% | キリングループ |
- 開示する人的資本の数値は今後設定していく
- 参考:ESGデータ https://www.kirinholdings.com/jp/investors/esg/esg/
- ESGデータ項目「労働慣行あるいは人権影響に関する苦情で、正式な苦情処理制度により申立、対応、解決を図ったものの件数(件)」