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事業等のリスク

キリングループの戦略・事業その他を遂行する上でのリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を以下に記載しています。また、必ずしも重要な影響を及ぼすリスク要因に該当しない事項についても投資家に対する積極的な情報開示の観点から記載しています。
キリングループでは、戦略・事業遂行上でのリスクや重大なクライシスに転ずる可能性のあるリスクを「グループリスク・コンプライアンス委員会」にて把握・検討し、グループ重要リスクとして整理しています。さらに、戦略リスクを適切に管理・統制すると共に、クライシスに転ずるリスクの顕在化を可能な限り防止し、クライシスに転化した場合はその影響を最小限に留めるなど、各種のリスクマネジメント体制を整備しています。

  • 当社は、「キリングループ2019年-2021年中期経営計画」をもとに、2019年度以降の事業セグメントを用いて本文を記載していますが、本文中における将来に関する事項は2018年12月31日現在において当社が判断した内容に基づきます。

[A. 戦略及びコンプライアンス上のリスク]

(1) 各事業領域におけるリスク

① 食領域(酒類事業・飲料事業)に関するリスク

今後の酒類事業・飲料事業は、国内では人口減少により長期的に総需要の縮小が見込まれる中、価格の二極化や嗜好の多様化が進んでおり、RTDを含む低価格帯カテゴリーが伸長する一方、クラフトビール等の高価格帯カテゴリーや無糖飲料・機能性飲料等の健康志向の商品の需要が拡大していくことが予測されます。海外では、国や地域によって事業環境は異なり、人口増加による総需要拡大や新たな飲用人口の拡大に伴う低価格帯カテゴリーの成長が今後も見込まれる新興国市場がある一方、先進国市場や発展段階の進んだ新興国市場においては、日本と同様に、高価格帯カテゴリーの伸長や健康志向の商品への需要が見込まれます。
こうした市場環境の変化に対応するため、キリングループでは、お客様とブランドのつながりを強めてモノだけに留まらない体験価値を提供し、強いブランドを維持・育成する「お客様主語のマーケティング力」を強化することにより、競争優位なブランドポートフォリオ構築を目指しています。
しかしながら、国内の酒類事業(キリンビール㈱)においては、今秋に予定されている消費税増税、2026年のビール類酒税一本化に向けた段階的な酒税改定に伴う販売価格の変動や競合他社の動向等により、予想を超えて酒類市場のカテゴリーの構成が変化し、販売計画を達成できない可能性があります。
海外の酒類事業(ライオン社)は、ライオン社が戦略的に展開する海外クラフトビールにおいて、グローバル大手酒類メーカーを中心に、高価格帯市場での競争力を高めようとする動きが加速しており、戦略に沿った展開が進まない可能性があります。
国内の飲料事業(キリンビバレッジ㈱)においては、基盤ブランド商品の販売数量が計画以上に減少又は容器構成差異が悪化することにより、成長を伴う利益の創出が計画通りに進まない可能性があります。
米国の飲料事業(CCNNE社)では、米国での事業エリア拡大に伴う抜本的な構造改革を進めていますが、適切な事業体制の構築に遅れが発生する場合、目標とする利益率の改善が進まない可能性があります。
サプライチェーンの観点からは、地震等の大規模自然災害・天候不順・冷夏・干ばつ・集中豪雨等の影響によりサプライチェーンが分断する可能性があります。さらに、国内ではトラックのドライバーが不足する等、サプライチェーン全般を通じて人材確保が困難になってきており、取り巻く環境の厳しさが増しています。キリングループでは、需給予測精度の向上や物流能力を強化し、リスクの低減を進めていますが、外部環境変化や労働力不足等の影響が想定よりも大きい場合、調達・製造・輸送コスト等の上昇や販売の機会損失等が発生し、キリングループの業績・財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
その他のリスクとして、オセアニア綜合飲料事業では、2018年10月から飲料事業の株式を第三者に譲渡する検討を開始しましたが、株式譲渡プロセスの大幅な遅滞や株式譲渡の履行不能が発生する場合、新たな事業体制の構築が計画通りに進まない可能性があります。
また、ミャンマー(ミャンマー・ブルワリー社)では、新規参入や競合他社の攻勢によって、事業への影響を受ける可能性があります。

② 医領域(医薬・バイオケミカル事業)に関するリスク

医薬事業(協和発酵キリン㈱)では、「グローバル・スペシャリティファーマ」に向けた取り組みが順調に進展し、グローバル戦略品の開発・上市と共に、海外での事業展開を加速させています。一方で、グローバル戦略品について市場浸透の低迷や安定供給の問題が発生する場合には、「グローバル戦略品の価値最大化」が計画通りに進まない可能性があります。
また、医薬事業では事業のグローバル展開を進めるにあたり、確実な供給体制の構築を進めています。しかしながら、製造施設・物流施設において技術上又は法規制上の問題、原材料及び燃料の供給停止により、製品の供給が停止又は遅延した場合や予想を上回る製品の需要増により製品の供給が不足した場合は、医薬事業の業績・財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
加えて、新薬の開発には、長い年月と多額の研究開発費を必要としますが、開発の過程において、期待通りの有効性が認められない場合や安全性等の理由により、研究開発の継続を断念しなければならない可能性があります。知的財産権が侵害された場合には、製品の売上収益又は技術収入が予定より早く減少する可能性があり、第三者の知的財産権を侵害しているとして第三者から訴訟を提起された場合には、製品の製造・販売等の差し止め、損害賠償金や和解金の支払い等が発生する可能性があります。他社製品との競合や協和発酵キリングループ製品の特許権満了後の後発品参入がある場合には、売上収益が減少する可能性があります。

③ 「医と食をつなぐ事業」に関するリスク

キリングループは酒類、飲料、医薬・バイオケミカルといった既存の事業領域で培ってきた組織能力・資産を活用し、「医と食をつなぐ事業」の立ち上げと育成に取り組んでいます。この領域では、疾患の発病予防や進行抑制による健康の維持や生活の質の向上、社会保障費抑制などの課題に対し、医と食の両面で強みを持つキリンならではの取り組みを行い、エビデンスに基づく商品・サービスを訴求力の高いチャネルを通じて提供する事業を立ち上げ、グループの次世代の柱として育成していきます。「医と食をつなぐ事業」は新規事業分野であり、優位性のあるビジネスモデルや適切な組織・ガバナンス体制を構築できない場合や技術開発が想定通りに進まない場合は、新規事業の立ち上げ・育成が計画通りに進まない可能性があります。
さらに、「医と食をつなぐ事業」における市場開拓や販売促進、新規性のある素材等の研究開発にあたっては、ICTの活用や豊富な知見を持つ社外の事業者や専門家との連携が不可欠ですが、これらの活用が不十分なレベルに留まった場合にも新規事業の立ち上げ・育成が計画通りに進まない可能性があります。

(2) 各事業領域共通のリスク

① 「事業領域の維持・拡大」に関するリスク

キリングループでは、既存・新規を問わず自らの事業領域において、消費者の生活や価値観の変化に適応したビジネスモデルのあり方を常に考えています。自社及び他社との提携等により開発・製造・輸送・販売等のサプライチェーンの構築を行っていますが、事業環境変化によってこれらの機能が低下したり、変化への対応が遅れたりした場合には、キリングループの業績・財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。情報技術の発達・サプライチェーンの変化・商品やサービスの変化等を背景に、既存の競争事業者に限らず、異分野・異業種の事業者がキリングループの事業領域に参入し、新たな競争事業者となる可能性もあります。特に、競争事業者がキリングループの事業領域において、ICT等を活用した画期的なビジネスモデルに基づき事業拡大をした場合、キリンのビジネスモデルや従来から有する強みが急速に陳腐化し、キリングループの事業領域の維持又は拡大が困難になる可能性があります。
キリングループの新たな成長に向けた事業領域の拡大等においては事業・資本提携も想定していますが、事業・資本提携にあたりキリングループが提携先の経営・事業・資産に対して十分なコントロールができない可能性があります。
また、既存事業についても事業環境の変化等により事業遂行上の影響を受ける可能性があります。それらの結果、出資先企業や既存事業の業績不振等により、キリングループの業績・財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
そうした場合に、新規の出資に伴い発生する、又は既存事業において有するのれん等の減損損失が生じる可能性があり、キリングループの業績・財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

② 「情報技術」に関するリスク

ICTソリューションやプラットフォームを構築し、これまで以上に深いお客様理解から得られるインサイトを具現化した商品・サービスの提供、業務プロセス課題の改善・解決や業務品質向上を目指していますが、ICTの構築・運用が遅れることにより競争力のある価値創造が実現できない可能性があります。また、経営基盤の再構築と高度化、グループ会社間での業務の効率化による生産性向上を目指し、標準化された情報システムの導入を進めていますが、想定通りに進まない場合は、キリングループの業績・財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
情報システムについては、コンピュータウィルスの感染や不正アクセスによる情報の消失、データの改ざん、個人情報や会社の重要機密情報の漏洩、さらには地震等自然災害の発生により、情報システムの停止又は一時的な混乱が起こる可能性があります。

③ 「人材確保・育成」に関するリスク

事業の遂行やイノベーションを実現するには、多様な価値観・専門性を持った人材が集い、それを受容することが必要であり、キリングループでは、多様性を尊重し価値創造を実現するための組織能力向上を目指しています。キリングループは国内外で事業活動を行っており、様々な人種・国籍や文化を持つ従業員が働いています。また、グループ経営を推進する人材の育成に向けて、組織風土の変革や価値創造を推進するトップ及びミドルマネジメント層のリーダーシップ強化に取り組んでいます。しかしながら、グループ経営を推進する人材や事業活動に必要な高い専門性を持った人材を十分に確保・育成できない場合は、競争優位性のある組織能力が実現しない可能性があります。

④ 「製品の安全性」に関するリスク

キリングループでは、グループの自社工場で製造する製品や製造委託工場・輸入品等の他社製造品について、品質保証システムによりグループ全体での品質監査を実施する等、品質保証に最大限の努力を払っていますが、品質保証の取り組みの範囲を超えて、予期し得ない品質問題等が発生した場合には、キリングループの事業活動が制限され、業績・財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
加えて、医薬品は開発段階において厳しい安全性の評価を行い、所轄官庁の審査を経て承認されますが、市販後に予期していない副作用が発生した場合には、キリングループの業績・財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑤ 「コンプライアンス」に関するリスク

キリングループは事業の遂行にあたって、国内においては、酒税法、食品衛生法、薬機法、独占禁止法、環境諸法令等の法的規制の適用を受けています。また、事業を展開する各国においては、当該国の法的規制の適用を受けています。これらの法令等に違反した場合や社会的要請に反した行動等により、法令による処罰・訴訟の提起・社会的制裁を受けたりお客様からの信頼を失ったりする可能性があります。
キリングループでは、コンプライアンスを「法令、社内外の諸規則・ルール及び社会規範を遵守し、法的責任と社会が求める倫理的な責任を果たすことにより、予期せぬ損失や信用の失墜を防止し、ステークホルダーのキリングループに対する信頼を維持向上させること」と定義し、リスクのマネジメントサイクルや従業員啓発の研修を通じたコンプライアンスの推進により、従業員の法令違反や社会規範に反した行為等の発生可能性を低減するよう努めています。また、贈収賄防止をはかり、不当な金銭・贈答・接待及びその他の利益の提供又は受領を禁じています。

[B. 中長期の視点から事業に影響を及ぼす可能性のあるリスク]

① 「アルコール関連問題」に関するリスク

キリングループは、酒類を製造・販売する企業グループとして、社会的責任を果たすために、広告・宣伝活動にあたっては厳しい自主基準に基づき自ら規制を行っています。また全ての酒類事業展開国で、アルコールの有害摂取の根絶に向けた取り組みを進展させています。一方で、WHO においては、世界的な規模での酒類販売に関する規制が検討されており、キリングループの予想を大きく上回る規制強化が行われた場合、アルコールへの社会的受容が急激に縮小することにより酒類の消費が減少し、キリングループの業績・財政状態に悪影響を及ぼす可能性や企業ブランド価値が低下するおそれがあります。

② 「環境課題」に関するリスク

マイクロプラスチックによる海洋汚染に関する国際的な関心の高まりや廃プラスチックの流通構造変化等により、PETボトルをはじめとするプラスチック容器の問題がクローズアップされています。キリングループでこれらの問題に適切な対応ができない場合、飲料事業を中心にグループの事業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、地球温暖化に対する世界の関心や気候変動のリスク情報を企業の財務情報として開示する要請が高まっています。キリングループは、2018年12月に金融安定理事会により設置された「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を、日本の食品会社として初めて表明しました。さらに、温室効果ガス排出量を2030年までに2015年比で30%削減する中期削減目標を掲げ、2017年3月に「Science Based Targets(SBT)イニシアチブ」の承認を日本の食品会社で初めて取得し、削減に向けた活動を始めています。しかしながら、これらの目標を達成できなかった場合や環境事故を発生させた場合に、事業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。 さらに、キリングループが事業活動を行う国内外の生産拠点において、渇水や汚染等により水資源が確保できず、商品の製造が停止するおそれや森林破壊等の環境破壊を伴う調達を行うことで企業ブランド価値を毀損するおそれがあります。

③ 「人権」に関するリスク

キリングループでは、2018年に国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠した「キリングループ人権方針」を策定するなど、人権尊重を推進する取り組みを強化しています。人身取引を含む奴隷労働や強制労働、児童労働を認めない他、人種、民族、国籍、社会的身分、門地、性別、障害の有無、健康状態、思想・信条、性的指向・性自認及び職種や雇用形態の違い等に基づくあらゆる差別の禁止等を求めています。また人権に対する負の影響を特定し、予防、軽減する取り組みとして人権デューデリジェンスの実施を進めています。万一、キリングループが人権問題を発生させた場合や人権上の問題のある調達を行った場合には、当該国又はグローバルでの事業活動に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

④ 「各国の政策」又は「業界固有の状況」に関するリスク

キリングループが事業活動を行う国・地域は広範であり、特に新興国における法令・規制の変化、テロ・戦争やその他の要因による政治・経済・社会的混乱、文化や慣習の違いに起因するトラブル発生等が予想されますが、こうしたカントリーリスクが顕在化する場合、キリングループの業績・財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
医薬事業では、事業を行っている各国の薬事行政の下で様々な規制を受けています。国内では、公定薬価制度による薬価の引き下げに加え、ジェネリック医薬品の使用促進等による医療制度改革が進められています。海外においても、医療費抑制への圧力は高まっています。これら薬事行政の規制により医薬品の販売価格が下落し、販売数量の伸長等で影響をカバーできない場合には、医薬事業の業績・財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、各国での医療財政の大幅な悪化に伴い、想定外の薬価改定や社会保障制度の変更等が発生する場合には、医薬品市場が縮小し収益性が低下するおそれや医薬品開発の進捗に遅延を招いたり製品の上市が困難になったりするおそれがあります。
なお、海外での法規制の緩和に伴い、キリングループの事業活動を展開する国や地域で嗜好用大麻が解禁され、アルコール飲料の代替となる場合には、酒類事業の事業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑤ 「財務」や「税務」に関するリスク

キリングループの事業資金は、主に金融機関からの借入、コマーシャル・ペーパーや社債の発行等により調達されています。このため、金融市場の不安定化・金利上昇、また格付機関によるキリングループの信用格付けの引き下げの事態が生じた場合等には、資金調達の制約を受け、資金調達コストが増加する可能性、あるいは全くできない状況に直面する可能性があります。これらの事態が発生した場合、キリングループの業績・財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、キリングループの原材料及び商品の一部は、海外から調達していることから、予測の範囲を超える急激な市況変動や為替変動があった場合等には、キリングループの業績・財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、海外の子会社及び持分法適用会社の経営成績は外貨ベースで作成されており、連結財務諸表作成のために円換算していますが、円換算時の為替レートにより円換算後の価値が変動することから、キリングループの業績・財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
税務においては、キリングループは、世界各国で適用される税法を遵守する方針に沿って事業活動を行っていますが、各国における租税制度の改正、税務行政の変更や税務申告における税務当局との見解の相違等により、追加での税負担が生じたり、社会的信用が低下する可能性があります。

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