2008年8月8日

キリン食生活文化研究所 レポートVol.10
2007年世界主要国のビール生産量
〜 世界のビール総生産量が、当社の統計開始以来、最高増率を更新!
金メダルは中国で6年連続世界No.1、急伸するロシアは初の第3位に 〜

 キリンホールディングス株式会社(社長 加藤壹康)のキリン食生活文化研究所では、世界各国のビール協会などに対して独自に実施したアンケート調査と最新の海外資料に基づき、2007年の世界主要国および各地域のビール生産量をまとめました。この調査は1974年分から統計開始しています。

【トピックス】

  • ■世界の総生産量は約1億7,937万kl(前年比5.9%増)で、東京ドーム約145杯分に相当。(昨年より8杯増)統計開始以来、最高増率を更新。
  • ■国別では、6年連続で中国(13.8%増)がNo.1。ロシア(16.1%増)はドイツ(第4位、2.0%減)を抜いて初の世界第3位に。(消費量では2006年に初の世界第3位となった。)アジアでは中国のほか、タイ(7.4%増)、ベトナム(12.5%増)、韓国(8.8%増)が顕著な伸びを示し、日本は2006年と同じく0.4%の微減となった。
  • ■地域別では、全地域が増加。特に成長が著しいアジア(11.1%増)は、構成比が1.4ポイント増加し初の30%台超え。最大地域のヨーロッパ(32.8%)に近づいたことで、世界の2大ビール生産地域の構図が鮮明となった。
  • ■経済発展が著しいBRICs諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国計)は約6,219万kl(前年比12.9%増)で構成比は34.7%となり、初めて最大地域ヨーロッパ(32.8%)を上回った。
  • ■本日北京オリンピックが開幕!総生産量は、前回のアテネオリンピックが開催された2004年から急速に増加。また、生産量上位3ヵ国はアテネオリンピック金メダル獲得数上位3ヵ国(1位アメリカ36個、2位中国32個、3位ロシア27個、日本は5位の16個)と一致するなど、産業からスポーツまでしのぎを削っている様子がうかがえる。

 2007年の世界のビール総生産量は、1974年の統計開始以来、過去最高の増率(5.9%増)を記録しました。前年比約997万kl増(大びん633ml換算で約158億本)の約1億7,937万klとなり、東京ドームをジョッキに見立てると、約145杯分(東京ドーム1杯分は約124万kl)に相当。世界の総生産量は1985年以降23年連続で増加を続けていることになります。
 新興市場の大幅な成長でビール生産が活発化したことに加え、世界の年間平均気温が高温(気象庁の統計開始以来6番目の高さ)であったことなどが生産量増加の要因と考えられます。世界規模でのビール業界再編の波が加速している今、今後もこの傾向は続くものと思われます。

※1891年から統計開始。

1.地域別生産量(表1)

 地域別では、全地域で対前年増となりました。アジア(11.1%増)、アフリカ(6.7%増)、中南米(5.6%増)といった新興市場が高い増率を示し、最大構成比のヨーロッパ(4.0%増)もロシアの牽引で増加しました。
 特にアジアは、国別1位となった中国(13.8%増)やタイ(7.4%増)、ベトナム(12.5%増)、韓国(8.8%増)の貢献により、構成比も1.4ポイント伸ばし初の30%台となりました。
 また、最大のビール市場であるヨーロッパは、ドイツ(2.0%減)やイギリス(6.0%減)が減少したものの、近年大幅な増加傾向が続いているロシア(16.1%増)やポーランド(9.2%)、ウクライナ(18.1%)、ルーマニア(11.1%)が牽引し、最大地域のポジションを維持しました。

2.国別生産量(表2)

 昨年4位であったロシアが順位を上げ、2006年の消費量に続き、生産量でも初めて3位となりました。また、高い増率を示したルーマニア(11.1%増)は20位から17位に、ベトナム(12.5%増)は24位から21位と大きく順位を上げました。
 2002年にアメリカ合衆国を抜いて以来6年連続で1位の中国は、3年連続2ケタ台の増加となり、2位のアメリカとの差を1,597.3万klにまで広げて、ビール大国へと成長しています。経済発展に伴う個人所得拡大、生活水準の向上や、飲用層が沿岸部からその周辺部に拡大していることなどが要因と考えられます。
 近年急激な伸びを示している注目市場のロシアは、暖冬と個人所得の増加などから、16.1%増と引き続き成長を続けています。また、健康志向を背景としたウォッカなどのハードリカーからビールなどの低アルコール飲料へのシフトや外国資本企業の現地製造が加速したことでその勢いは加速。今後もさらなる市場拡大が予測されます。
 その他では、韓国(8.8%増)やロシア周辺のウクライナ(18.1%増)、ポーランド(9.2%増)、ルーマニア(11.1%増)、中南米のブラジル(7.0%増)、ベネズエラ(9.4%増)が高い増率を示しています。
 日本は、少子高齢化、嗜好の多様化の影響などにより3年連続減(0.4%減)となりました。

3.10年前との比較(表3)

 2007年の世界のビール生産量を10年前と比較すると37.0%増となりました。国別では、中国が2.1倍(2007年第1位:110.8%増)、ロシアが4.4倍(同第3位:344.4%増)、ウクライナが5.2倍(同第11位:418.2%増)となっており、急速に市場が拡大したことが分かります。また、タイ(同16位:159.6%増)やベトナム(同21位:219.3%増)でも増加が顕著になっており、経済成長を続けるアジアの中でもASEANの今後が注目されます。一方、アメリカ合衆国(2007年第2位:1.3%減)、ドイツ(同第4位:8.5%減)、日本(同第7位:12.1%減)、イギリス(同第8位:14.6%減)は10年前に比べて減少していることから市場の成熟化がうかがえます。
 また、日本の順位は1989年から第4位を維持してきましたが、その後1995年にブラジル、2002年にロシア、2003年にメキシコに抜かれて以来、第7位を保っています。

注:日本の生産量については、ビール、発泡酒、新ジャンルの合計。

出典:各国ビール協会などへのアンケート調査(当社が実施したもの)
The Barth Report Hops 2007/2008 (BARTH−HAAS GROUP)

(表1)2007年 地域別ビール生産量

※日本の生産量については、ビール、発泡酒、新ジャンルの合計

2007年地域別ビール生産量構成比

【解説】

  • 全ての地域で増加。
  • 成長市場のアジアでは、中国(13.8%増)、タイ(7.4%増)、ベトナム(12.5%増)が貢献し、アジア全体の構成比を対前年で1.4ポイント伸ばした。
  • 最大地域のヨーロッパは、ロシア(16.1%増)やロシア周辺国であるウクライナ(18.1%増)、ルーマニア(11.1%増)が牽引して4.0%増となった。

参考:世界の総ビール生産量増率の推移

参考:2007年 世界の総ビール生産量のジョッキ換算

(表2)2007年 国別ビール生産量

※日本の生産量については、ビール、発泡酒、新ジャンルの合計

【解説】

  • 2002年にアメリカ合衆国を抜いて以来6年連続で1位の中国は3年連続2ケタ台の増加で、アメリカとの差を1,597.3万klまで広げた。平均気温の上昇や経済発展などに伴う個人所得増加、生活水準の向上により、飲用層が沿岸部から周辺部に拡大していることなどが要因と考えられる。また、北京オリンピック開催による経済拡大も影響しているものと思われる。
  • 近年急激な伸びを示している注目市場のロシアは、16.1%増と引き続き成長し、2006年の消費量に続き、生産量でも初の第3位となった。健康志向などを背景に、ハードリカーから低アルコール飲料へのシフトが加速。外国資本のビール企業のロシア現地製造も加速していることから、今後も拡大が続くものとみられる。
  • ロシア周辺のウクライナ(18.1%増)やポーランド(9.2%増)、ルーマニア(11.1%増)も高い増率を示している。
  • 中南米では、第5位でBRICsの一画であるブラジルが安定した経済成長による国内消費の好調により7.0%増、第14位のベネズエラ(9.4%増)も高い増率となっている。
  • 上位20カ国の中でトップの増率を記録したのはヨーロッパのウクライナ(18.1%増)で、2番目に高い増率も同じくヨーロッパのロシア(16.1%増)となっている。
  • 日本(0.4%減)は、少子高齢化、嗜好の多様化などの影響により、市場全体が縮小した。

(表3)2007年 国別ビール生産量〜10年前との比較〜

※日本の生産量については、ビール、発泡酒、新ジャンルの合計

【解説】

  • 2006年の世界のビール生産量を10年前と比較すると37.0%増となっている。
  • 国別では、中国が2.1倍、ロシアが4.4倍になっているほか、ウクライナが5.2倍、ルーマニアやタイ、ベトナムも高い増率となっている。

(参考)2004年 アテネオリンピック金メダル獲得数順位とビール生産量順位

上位25ヵ国

【解説】

  • オリンピックイヤーにちなんで、ビール生産量上位の国の前回アテネオリンピック時の金メダル獲得数を調べたところ、上位10ヵ国のうち、6ヵ国が金メダル獲得数でも10位以内に食い込んでいる。
  • 特に上位3ヵ国はアメリカ・中国・ロシア。この3ヵ国は、経済、政治からスポーツまでしのぎを削っている様子がうかがえる。
  • 日本は、前回アテネオリンピックでは金メダル16個の第5位と大健闘。今年もビール生産量順位7位を上回る活躍を期待。