2008年8月11日

飲料の「のどごし」を客観的に測定する方法を開発
〜 飲みやすい飲料では、のど筋電図で低周波成分が減少 〜

 キリンホールディングス株式会社(社長 加藤壹康)のフロンティア技術研究所(横浜市金沢区、所長 水谷悟)は、ビールや発泡酒、新ジャンル、清涼飲料を飲用する際の感覚として表現される「のどごし」を客観的に測定するため、飲用時ののど筋電図を周波数解析※1する簡便で高感度な測定方法を新潟医療福祉大学 真貝富夫講師とともに開発しました。この方法を用いた結果、一般に飲みやすいといわれる飲料では、飲用時ののど表面筋電図の低周波成分が減少し、高周波成分が上昇することがわかりました。この研究成果は9月18日に日本味と匂学会第42回大会で発表します。

  • ※1 のどの筋肉の動くタイミングや大きさを電位差として測定し、これを周波数で分けて成分比を求める方法。筋繊維に沿って2つの吸盤電極を貼り付け、筋肉が収縮する際に現れる活動電位を筋電図として記録した後、パソコンと解析ソフトを用いて周波数成分比を計算する。

 ビールや発泡酒、新ジャンルなどでの官能評価の項目として挙げられる「のどごし」は、飲食物がのどを通っていくときの感覚を表現していますが、生理学的に何を指しているのかはよくわかっていません。今回、運動などで筋肉が疲労すると表面筋電図の低周波成分が上昇し、高周波成分が減少することから、「のどごし」の良さは飲用時ののど筋肉の疲れにくさと関係があるのではないかと考え、オトガイ下筋※2の筋電図を計測し、これを周波数解析する方法を開発しました。

  • ※2 下あごの下の咽頭を挟んで左右にある筋肉。オトガイは下あごの前面中央部(梅干の種のようなしわのできる部分)を指す。

 検証方法として、冷水、炭酸水、硬水、軟水など複数のサンプルを飲用した際のオトガイ下の表面筋電図の周波数解析を行ないました。その結果、一般に飲みやすいといわれている軟水(硬度※3約60)は硬水(硬度約1,500)と比較して低周波成分が減少し、高周波成分が上昇しました。また、「飲みやすい」といわれる冷水や炭酸水でも同様の結果となりました。このことから、一般に「飲みやすい」特性をもつ飲料を飲用した際の生理的側面として、のど表面筋肉で低周波成分が減少し、高周波成分が上昇することがわかりました。

  • ※3 水に含まれるカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンの量をこれに対応する炭酸カルシウム量に換算したもの。100以下のものは「軟水」、300を超えると「硬水」といわれている。

 あわせて、これらの周波数成分の違いと、味そのものの性質との関係について基本5味「酸味(クエン酸)」、「甘み(砂糖・グラニュー糖)」、「塩味(食塩)」、「苦味(カフェイン)」、「うま味(グルタミン酸ナトリウム)」の水溶液で検証したところ、塩味では低周波成分が上昇し、酸味では高周波成分が上昇することが確認されました。また、官能評価で「のどごし感」に差があったビールと新ジャンル各1商品で測定したところ、官能評価で「のどごしが良い」と評価された新ジャンル商品で低周波成分が減少する結果が得られました。
 この測定法は、飲用時にもっとも大きく動くオトガイ下筋の筋電図を計測することから、簡便で感度が高いことが特長です。今後は、清涼飲料も含めた各種商品の特性について調査を行い、「のどごし感」などの客観的な指標として商品開発などへの応用を検討する予定です。

 キリングループは「おいしさを笑顔に」をグループスローガンに掲げ、いつもお客様の近くで様々な「絆」を育み、「食と健康」のよろこびを提案していきます。