2009年2月10日

2009年 キリングループ事業方針について
〜次期中計のゼロ年度として、グループプレミアムの拡大を目指す〜

 キリングループは、「2007-2009年キリングループ中期経営計画」の最終年であり、次期中計のゼロ年度として位置づける2009年のスタートを切りました。
 2008年は、急激な経済環境の変化もある中、引き続き“攻めの姿勢”とスピード感を持って、従来の延長線ではない飛躍的な成長に向けた取り組みを推進しました。
 2009年も、修正中期経営計画で強化ポイントとして掲げた「事業会社の自律的成長」「グループシナジーによる成長」「大胆な資源配分による成長」の“3つの成長パターン”を軸に経営に取り組み、“量的拡大”から“質的拡大”への変革を実現することで、キリンブランドの価値向上を目指します。加えて、キリングループならではのCSRの取り組みを推進することで、社会との信頼関係を築きます。

2009年事業計画

質的拡大

“3つの成長パターン”を“質的拡大”の実現に向け集中させる

「事業会社の自律的成長」
綜合飲料グループ戦略の推進=事業会社の自律的成長戦略の加速
「グループシナジーによる成長」
シナジー目標の設定と管理、最適なグループ経営体制の構築と運営力強化
「大胆な資源配分による成長」
商品やエリア的にシナジー創出効果の高い投資、事業ポートフォリオの最適化

【基本方針】

  • “3つの成長パターン”を軸とした、基盤事業の強化と飛躍的な成長の実現
    [1]国内酒類事業の再成長  [2]国内綜合飲料グループ戦略の推進
    [3]国際綜合飲料グループ戦略の推進/国際化の推進  [4]健康・機能性食品事業の展開
    [5]医薬事業の成長加速  [6]既存各事業の展開  [7]コスト競争力の強化
  • グローバルな競争環境下での強みとなるグループシナジーの創出
  • 企業価値の最大化に向けた、最適なグループ経営体制の構築と運営力強化
  • キリングループCSRの推進

【定量目標】

 2008年実績2009年目標 参考:中計発表時
2009年目標
参考:修正中計発表時
2009年目標
連結売上高(酒税込み) 2兆3,035億円 2兆3,000億円 2兆1,500億円 2兆5,000億円
連結売上高(酒税抜き) 1兆9,228億円 1兆9,300億円 1兆7,000億円 2兆1,000億円
営業利益 1,459億円 1,210億円 1,500億円以上 1,750億円
営業利益率(酒税込み) 6.3% 5.3% 7%以上 7%以上
営業利益率(酒税抜き) 7.6% 6.3% 9%以上 8.3%以上
ROE 8.1% 6.0% 7%以上 7%以上
海外売上高比率(酒税抜き) 27% 24% 22%程度 26%程度

2009年基本方針に基づく取り組み

1.事業会社の自律的成長

 キリングループは、グループシナジーからプレミアムを創出することで、企業価値を高め、アジア・オセアニアのリーディングカンパニーとなることを目指しています。その基盤となる「事業会社の自律的成長」を加速するためには、各事業においてシナジーを最大化することが重要であり、その柱が独自のビジネスモデルとして推進している綜合飲料グループ戦略です。

 この綜合飲料グループ戦略を国内において推進する主要事業会社であり、かつグループのマザービジネスとしてもグループ全体を牽引するキリンビール社は、引き続き総合酒類提案力の向上や、グループ連携強化によりお客様から最も支持されるとともに、厳しい事業環境の中でも安定した利益を生み出す強い企業体質を構築します。2009年も引き続き「定番商品の強化」「健康志向への対応強化」「総需要拡大」をマーケティング戦略の柱に、さらに “エビデンスマーケティング”の考え方を取り込むことで、多様化するお客様のニーズに応え、お客様支持率のさらなる向上に取り組みます。
 メルシャン社は、ワイン・加工用酒類へ経営資源を集中し、収益性の改善に取り組むとともに、ワイン事業では「ストロングNO.1」に向け、選択と集中、お客様視点を重視した戦略を展開します。また、キリンビール社およびキリンマーチャンダイジング社と協働することで、営業力を強化します。
 国内綜合飲料グループ戦略推進のもう1つの鍵となるキリンビバレッジ社は、お客様本位の原点に立ち戻り、“量的拡大”から“質的拡大”へと大きく戦略を転換します。中長期的な成長をにらみ、まずは「収益基盤の構築」と「新たな競争軸の強みづくり」に取り組みます。また、引き続きキリンビール社と各バリューチェーンでの連携による価値創造に取り組みます。

 同様に海外でも綜合飲料グループ戦略を進め、2015年の海外売上高比率30%実現に向けて、引き続きアジア・オセアニアを中心に各事業の“質的拡大”を目指します。
 中国では、麒麟(中国)投資有限公司を中心に、「午後の紅茶 ミルクティー」など強力なブランドを中国で展開する清涼飲料事業との連携を深めることで、長江デルタなどの重点地域での活動を強化します。豪州では、ナショナルフーズ社を中心に、健康・機能性食品事業も含めた「食と健康」領域の基盤強化を進めるとともに、ライオンネイサン社を含めた綜合飲料グループ戦略も検討していきます。さらにフィリピンでは、サンミゲル社との戦略的提携を強化します。
 成長市場として注目が高まるベトナムでは、下期からの工場稼動により飲料事業を本格的にスタートするほか、タイでは、新たなカテゴリー商品も展開し商品ポートフォリオの強化を図ります。

 健康・機能性食品事業については、健康・機能性食品事業推進プロジェクトを中心に、グループ全体の力を結集した取り組みを始動しています。 飲料を中核とした“お客様が健康を意識して摂取する全ての食品”を領域に、グループ横断的な商品開発を検討し、2010年の第一弾商品上市を目指します。
 調味料事業については、4月に新たに発足する「キリン協和フーズ社」を中心に、協和発酵フーズ社とキリンフードテック社がそれぞれ培ってきた発酵関連技術を基盤に、おいしさや健康を訴求した食品素材を提案していきます。

 医薬事業でも統合シナジーを最大化すべく、2008年10月から新たにスタートした協和発酵キリン社の「2008−2010年度中期経営計画」に則り、「がん」「腎」「免疫疾患」を中心とした領域で、抗体技術を核とした最先端のバイオテクノロジーを駆使し、世界の人々の健康と豊かさに貢献するグローバル・スペシャリティファーマを目指します。営業および研究開発での具体的な統合効果の創出を最重要課題としており、国内販売においては、腎領域への重点資源配分によるESA市場でのさらなるシェア拡大を目指すほか、海外事業ではアジアでの長期的収益基盤の確立や欧米での自社販売体制の検討を開始します。研究開発では、統合した2社の強みを最大限に生かした研究体制の構築、海外開発拠点の集中化、製造設備の新設を進めています。開発品目の優先順位を明確にすることで、世界に通用する新薬の早期製品化を目指していきます。

※Erythropoiesis Stimulating Agents(赤血球造血刺激因子製剤)

2.グループシナジーによる成長

 今中計前半では、飛躍的成長に向けた事業領域の拡張を中心に取り組みました。これらの経営資源を掛け合わせることで生まれる「売上シナジー」と、効果的活用や整理統合することで生み出す「コストシナジー」の創出を2009年から次期中計にかけて最重要課題として取り組みます。
 まず、「シナジープロジェクト」で抽出した14の優先課題を中心に、各事業会社・部門と連携した活動を推進するとともに、具体的なシナジー定量目標および達成に向けたスケジュールを策定し、進捗を管理していきます。

 「売上シナジー」については、キリンビール社およびキリンマーチャンダイジング社とメルシャン社の連携による販売チャネル強化、キリンビール社とキリンビバレッジ社による業務用市場や自販機設置での協働、医薬事業での統合によるESA製剤販売強化などを、具体的施策と定量目標で進捗管理します。「コストシナジー」では、すでに一部開始しているグループでの調達コスト削減施策や製造における協働、グループ最適の観点からの生産・物流拠点の見直しなどに取り組みます。
 同様に海外の綜合飲料グループ戦略においてもシナジー目標を設定し、中国では麒麟(中国)投資有限公司を中心に、豪州でもさらなる成長に向けた戦略を推進します。

 またグループシナジー創出に向けた課題の1つとして、経営体制と運営力を強化するための具体的な施策を2009年から開始します。グループ経営体制の最適化に向けて、これまで進めてきたホールディングスから事業会社および機能分担会社への業務移管を進めるとともに、キリンビール社の生産技術部、パッケージング研究所、市場リサーチ室、およびキリンホールディングス社の食品安全科学センターの4部門を「センター・オブ・エクセレンス」として、グループ全体のコンピタンスとなるべく計画的に育成します。研究・技術開発においてもシナジーを強化すべく、新たなグループでの研究・開発体制強化に向けた戦略を構築します。
 また、KV2015で目指す飛躍的成長の実現を担う人材育成に注力します。“アジア・オセアニアのリーディングカンパニー”を目指す中、特に“経営力”“グローバル対応力”を備えた人材の計画的な育成に向けた仕組みづくりを進めます。また、グループ基幹人材活用を推進するとともに、グループ間の交流人事を活発化し、グループシナジーの創出を、人事・組織の面からバックアップします。加えて、多様性やワークライフ・バランスを尊重する風土の定着を通じて、グループ全体の人と組織風土の活性化を進めます。

※生産技術部は2009年3月26日よりエンジニアリング部に名称変更

3.大胆な資源配分による成長と財務戦略

 「事業会社の自律的成長」と「グループシナジーによる成長」をより高次元で実現するために、既存の中核事業と商品やエリア的にシナジー創出効果が高い分野への投資を引き続き探索します。
<投資計画の基本方針>

  1. 独自の成長戦略である「綜合飲料グループ戦略」推進
  2. 売上/コストシナジ−を創出する飛躍的な成長
  3. コストシナジーを創出するためのインフラ・機能強化

 これらの施策を支えると同時に企業価値の最大化に向けて、株主重視の経営および飛躍的な成長を実現するための財務戦略を引き続き推進します。
 飛躍的な成長に向けた事業投資に必要な資金については、引き続き保有資産の整理や事業ポートフォリオの見直しを進めるとともに、格付けや財務健全性を考慮したうえで、必要に応じて借入金・社債などの負債による資金調達を主体として検討します。
 配当については、連結配当性向30%以上を指標とし、安定的な配当を基本に実質的利益水準の向上にともなう配当の増額を目指していきます。2009年12月期においては、飛躍的な成長戦略に基づく事業投資によるのれんなどの影響を勘案したうえで、前年同額を予定しています。また、自己株式の取得については、成長戦略に向けた投資の進捗と財務健全性を鑑み、時機を見て検討していきます。

4.キリングループCSRの推進

 キリングループは、企業価値の継続的拡大のために、すべての企業活動にCSRの視点を組み込み、「事業を通じてのCSR」と「企業市民としてのCSR」の2つの面から積極的に推進し、自然・社会との共生を図っていきます。
 「事業を通じてのCSR」では、日々の事業活動の中でCSRを常に意識することで、より高いレベルでのCSRを実現します。コンプライアンスのさらなる徹底とリスクマネジメント推進、食の安全・安心の徹底に向けた品質保証体制の強化、多様性の尊重、環境マネジメント推進、情報セキュリティの徹底、適正飲酒啓発活動などの企業として遵守すべき活動や、うるおいのある食生活の実現を目指す情報発信や価値提案に取り組みます。
 加えて2009年からは、「食と健康」を経営理念に掲げる企業グループが目指すべき社会として、グループ全体で「低炭素企業グループの実現」を中長期的なテーマに掲げ、アクションを開始します。カーボンミニマムのみならず豊かさを実感できる簡素な暮らしや自然との共生も含めた社会の実現に向け、事業活動のすべてのバリューチェーンで取り組んでいきます。
 「企業市民としてのCSR」では、事業活動の領域を超えたステージで、環境・スポーツ支援などの社会貢献活動を推進します。森林保全活動「水の恵みを守る活動」を継続するほか、サッカー日本代表支援や、次世代の育成を目的とした「キリンサッカーフィールド」を今年も開催します。また、今年で17年目を迎える「国連大学キリンフェローシップ」では、途上国の研究者に発酵・バイオ技術の素晴らしさを学ぶ機会を提供するとともに、途上国の食糧問題自主解決を支援します。

 キリングループは、「おいしさを笑顔に」をグループスローガンに掲げ、いつもお客様の近くで様々な「絆」を育み、「食と健康」のよろこびを提案していきます。

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※1キリンブルワリーオブアメリカ、キリンヨーロッパ、フォアローゼズディスティラリー、レイモンド ヴィンヤード&セラー、東山農産加工、台湾麒麟啤酒有限公司 ※2キリンフードテックは、2009年4月に協和発酵フーズと事業統合し「キリン協和フーズ」になる予定です。 ※3キリンヤクルトネクストステージは、2009年6月までにヤクルトグループの事業運営となる予定。