2010年3月23日

ケールの機能性成分高含有系統「ハイパール」を育成
〜独自の分析技術を活用し、短期間での育種素材の選抜に成功〜

 キリンホールディングス株式会社(社長 加藤壹康)のフロンティア技術研究所(栃木県さくら市、所長 水谷悟)は、長野県野菜花き試験場との共同研究を行い、機能性成分を多く含むケール品種の育成に成功しました。この研究成果は、3月21日に園芸学会平成22年度春季大会および3月28日に2010年度日本農芸化学会大会で発表します。

 ケールは、健康・機能性食品の原料として幅広く利用されていますが、その有効性については、いまだに解明されていない部分が多く、機能性成分に関する研究は増加傾向にあります。ブロッコリー、ケールなどのアブラナ科植物の特徴的な成分の一つであるグルコラファニンは、第二相解毒酵素誘導作用※1を有するとの知見が報告されているスルフォラファンの前駆体※2ですが、今回、ケールのグルコラファニン含量を測定する独自の分析法を開発し、多くの系統から効率的に選抜、掛け合わせを行った結果、グルコラファニン高含有のケール新品種「ハイパール」の育成に成功しました。

  • ※1 生体内の解毒反応は二段階に分かれており、二段階目の解毒反応(第二相)で働く酵素の生成量を増やす作用。この酵素は肝臓の細胞に存在しており、体内に摂取された発がん物質を無毒化する機能を持つ。
  • ※2 生合成経路上、ある物質の前に位置する物質。A→B→Cの経路でAはBの前駆体、BはCの前駆体となる。

 今回の研究では、当社保有のケール品種と長野県野菜花き試験場保有のケール品種の431系統について、当社が独自に開発した分析技術である「液体クロマトグラフィーを用いたグルコシノレート類の分析および精製法」※3を用いて、グルコラファニンを含む8種類のグルコシノレート類を高効率に分析し、グルコラファニンの含有量や、栽培試験の結果などから、2系統を親系統として選定しました。さらに、これら両親を数回にわたり評価した結果、組み合わせ系統において、グルコラファニンを従来品種比の30〜120倍含有する育成系統を獲得しました。

  • ※3 グルコシノレート類を分析する際に、硫酸基の一部分が離れやすいために必要となっていた強酸処理が不要で分析装置へのダメージを回避できる定量分析法。

 今後は、一般圃場での栽培特性調査などを行い、実栽培を進める予定です。また、特定の機能性成分を多く含むケール品種を商品開発などに利用することで、お客様の健康につながる新たな価値を提供することが可能になります。

 キリングループは「おいしさを笑顔に」をグループスローガンに掲げ、いつもお客様の近くで様々な「絆」を育み、「食と健康」のよろこびを提案していきます。