2010年5月28日

梅抽出物の免疫活性を確認
〜梅に関する生理活性の研究成果を日本栄養・食糧学会大会で発表〜

 キリンホールディングス株式会社(社長 三宅占二)のフロンティア技術研究所(横浜市金沢区、所長 水谷悟)は、梅抽出物が、動物で免疫賦活効果を示すことを見いだし、この研究成果を、5月23日に第64回日本栄養・食糧学会大会にて発表しました。

 梅は、健康維持のための食品として広く愛用され、様々な生理作用が示唆されていますが、科学的に検証された例は極めて少ないのが現状です。今回、梅の“免疫力の向上”という効果に着目して作用の科学的な解明に取り組み、マウスの細胞実験および個体実験で梅抽出物の免疫活性について検討したところ、その増強機能が確認されました。

 梅を40%エタノールで抽出し、エタノールに溶解した成分をマウスより採取した腹腔内マクロファージ※1に添加し、サイトカイン※2の一つであるIL-12(インターロイキン−12)※3の産生量を測定したところ、産生増強が確認されました。さらに、マウスの腫瘍細胞に対するNK細胞(ナチュラルキラー細胞)※4の傷害活性を調べたところ、その上昇が認められ、これらの細胞実験により、梅抽出物が免疫細胞を活性化させることが示されました。

  • ※1 抗原(ウイルスや細菌などの異物)が侵入してきた際に、それらを取り込んで消化する免疫細胞の一つ。抗原を取りこむとサイトカインを放出して活性化し、より効率よく異物を排除するようになる。
  • ※2 免疫細胞から分泌されるタンパク質で、特定の細胞に情報伝達することで活性化を促進し、免疫、炎症に関与するものが多い。
  • ※3 活性化されたマクロファージからの刺激によって産生し、ナチュラルキラー細胞の活性を増強する。
  • ※4 生体内に自然に存在する、殺傷能力の非常に高い細胞。腫瘍細胞やウイルス感染細胞の破壊に強い能力をもつ。

 また、梅のエタノール抽出凍結乾燥物を餌に混ぜてマウス個体に投与したところ、血中のサイトカインIL-12の濃度上昇と、脾臓中のマクロファージの活性化およびT細胞※5存在比率の上昇が確認され、個体実験においても抗原に対する免疫メカニズム活性への影響が示されました。

  • ※5 免疫メカニズムに関与するリンパ球の一つで、胸腺由来のもの。抗原排除、抗体産生および他の免疫細胞の活性化とさまざまな役割をもつ。

 これらのことから、梅抽出物が、マクロファージなどの抗原提示細胞の活性化を誘発し、さらにNK細胞やT細胞を活性化させ抗原排除を促進することが明らかになり、摂取によって免疫力を強化し、病気への抵抗力を高める作用がある可能性が示されました。

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