2010年10月27日

<参考資料>
「メタボロミクスを利用した下面発酵酵母の育種」の研究で
「日本生物工学会第43回生物工学奨励賞(江田賞)」を受賞
〜実用酵母育種に関する新たなアプローチを解明し、醸造技術の進歩に貢献〜

 キリンホールディングス株式会社(社長 三宅占二)のフロンティア技術研究所(横浜市、所長 水谷悟)の吉田聡主任研究員は、「メタボロミクスを利用した下面発酵酵母の育種」について、このたび、社団法人日本生物工学会より、「日本生物工学会第43回生物工学奨励賞(江田賞)」を受賞しました。授賞式および受賞講演は、日本生物工学会2010年度大会(10月27日・宮崎シーガイヤ ワールドコンベンションセンターサミット)にて開催されます。

 「日本生物工学会生物工学奨励賞(江田賞)」は、醸造に関する学理および技術の進歩に寄与した会員に対し授与されるもので、ビール酵母などの実用酵母の育種法に、主にメタボローム解析を用いることで新たなアプローチを提供し、またこれによって酵母以外の生物への解析手法の適用にも可能性をもたらしたことが高く評価され、今回の受賞となりました。キリングループでは、第33回(2000年)に続く2度目の受賞となります。

  • ※ 様々な状態の細胞や生体試料に含まれる代謝物質(メタボローム)を網羅的に測定し、細胞の違いやそれらが置かれる環境の違いによって代謝反応がどのように変化するかを統合的に解析すること。

 ビール酵母は、その種類や働きの違いがビールの微妙な香味の違いをもたらします。当社は、ビール酵母の性質を解明する研究に取り組み、これまで香気成分生成機構の解明や、発酵中に発現する遺伝子の解析などの様々な研究成果を通じて、ビール醸造の工程管理や品質改善、商品開発に活用してきました。

 今回受賞講演を行う「メタボロミクスを利用した下面発酵酵母の育種」は、メタボローム解析という新しい手法を用いて、遺伝子だけではわからなかった酵母の代謝(メタボローム)の流れを解析することで、ビールの酸化防止効果など品質向上に有効な成分を効率的に生成するビール酵母の育種や、品質に影響を与える成分の生成機構の解明を可能にしたものです。

 キリングループは、「食と健康」の領域で新しい価値を生み出すために、自然のもつ力を最大限に引き出す発酵・バイオの技術の先進化に取り組んでいます。今回受賞した技術についても、今後様々なビール酵母の育種につなげるとともに、グループの強み技術として、バイオプラスチックス原料などの有用物質を生産する微生物の開発をはじめ様々な技術開発にも応用し、幅広く研究成果を新しい価値の創出につなげていきます。

 キリングループは「おいしさを笑顔に」のグループスローガンを掲げ、いつもお客様の近くで様々な「絆」を育み、「食と健康」のよろこびを提案していきます。