[ヘルスサイエンス領域]

『腸内環境』をターゲットとした共同研究プロジェクトを開始

~キリンホールディングス株式会社と株式会社ファンケル~

  • 研究開発

2020年01月30日

キリンホールディングス株式会社

キリンホールディングス株式会社(社長 磯崎功典、以下キリン)は、2019年に資本業務提携をした株式会社ファンケル(社長 島田和幸、以下ファンケル)と『腸内環境』をターゲットとした健康増進に向けた共同研究プロジェクトを2020年1月から開始しました。

以前から、ファンケルは腸内環境を整え、体重・体脂肪を減らす機能性表示食品「内脂サポート」の研究開発をはじめ、腸内環境の改善を介した生活習慣病の研究を進めてきました。またキリンは、免疫研究を通じて得られた「プラズマ乳酸菌」や「KW乳酸菌」の事業化を行ってきました。 今回、両社のこれまでの腸内環境に関する研究成果を共有し協働することで、効率的に新たな価値創造を目指す共同研究プロジェクトが実現しました。今後、両社の強みを生かしたさまざまな取り組みを、本プロジェクト内で進めていきます。

本共同研究プロジェクトが目指すもの

本プロジェクトを進めることで、両社が保有する技術や知見を共有化し、それぞれが取り組んでいる最先端の研究プラットフォームを活用することができます。特に未解明である腸内環境や「腸内フローラ※1」が心身に与えるメカニズムの解明や腸内環境を整える新たな素材開発をさらに加速させることが期待できます。2021年までを一つの目安として、腸内環境や「腸内フローラ」と、生活習慣病や免疫機能との関連性の解明を通じて、新たなメカニズムで腸内環境を整える素材開発を行う計画です。またその素材を活用し、両社が持つサプリメントや、飲料、食品などに応用することで、お客様の美容と健康増進に向けた革新的な商品やサービスを提供していきます。

両社における今までの研究成果

腸内に存在する細菌の群は「腸内フローラ(腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう))」と呼ばれています。人間には推定40兆個ほどの菌が存在しており、個人個人で菌の種類や量に違いがあります。さらにそれらの菌は、多様な働きを持ち、近年では多くの病気に関係していることが分かってきました。つまり腸内環境を整えることは、食後の高血糖や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病の予防につながると期待されます。

  • 図1 iPS細胞由来の腸立体ミニ臓器

    図1 iPS細胞由来の腸立体ミニ臓器

ファンケルは、腸内環境へのアプローチとして、国立成育医療研究センター研究所が開発したヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)由来の腸の立体ミニ臓器、通称「ミニ腸※2」を活用して、腸内環境による生活習慣病への影響について、その作用メカニズムの解明を進めています(図1)。

  • 図2 人工大腸モデルイメージ

一方、キリンは、従来より腸内細菌と免疫機能や神経との関連性などに関する研究を行っています。人間の健康に大きく関わっている腸内フローラの変化や複雑な代謝の流れを解析するため、培養器を用いた「人工大腸モデル※3」を導入しています。このモデルは、腸内環境を改善する素材の検証や開発、安全性の評価など、腸内環境メカニズムの解明に向けた研究に応用されています(図2)。

キリングループは、長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027(以下、KV2027)」を策定し、「食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV※4先進企業となる」ことを目指しています。KV2027の実現に向けて、「食領域」(酒類・飲料事業)と「医領域」(医薬事業)で幅広く事業展開するキリングループならではの強みを生かした「医と食をつなぐ事業」の具体化を進める中で、ファンケルと資本業務提携しました。今後も両社の強みを生かしたさまざまな取り組みを進めていきます。

キリングループは、自然と人を見つめるものづくりで、「食と健康」の新たなよろこびを広げ、こころ豊かな社会の実現に貢献します。

用語解説

  1. 腸内細菌叢(腸内フローラ):
    ヒトの腸管内では多種・多様な細菌が生育しており、これらは腸内細菌と呼ばれ、個々の菌が集まって複雑な微生物生態系を構築している。この微生物群集を「腸内フローラ」または「腸内細菌叢」と呼ぶ。腸内細菌の構成は食習慣や年齢などによって一人ひとり異なり、個人差が大きい。
  2. ミニ腸:
    国立成育医療研究センター研究所 再生医療センター 生殖医療研究部 阿久津英憲先生らのグループによって開発されたヒト多能性幹細胞(ES、iPS細胞の総称)由来の腸のオルガノイド(立体ミニ臓器)のこと。吸収上皮だけでなくパネート細胞、杯細胞といった分泌細胞などを含む腸を構成するほぼすべての細胞を有するほか、平滑筋、腸管神経などの間質も有する。また、ミニ腸はヒト腸と同様の蠕動運動を行い、代謝機能も有するなど、実際の腸さながらの高い機能性を備えており、革新的なバイオツールとして活用が期待されている。
  3. 人工大腸モデル:
    専用の培養器で個々人の糞便を培養することで、腸内細菌叢環境を再現した実験用のモデル。その中に機能性食品素材等を投与することで、消化による素材の変化、食品成分の経時的な代謝変換、腸内細菌叢構成の変化、代謝産物等を解析することができる。
  4. CSV:
    Creating Shared Valueの略。お客様や社会と共有できる価値の創造。

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